《いり》來《きた》つた二個《ふたり》の人《ひと》がある。言《い》ふ迄《まで》もない、夫人《ふじん》と其《その》愛兒《あいじ》だ。濱島《はまじま》は立《た》つて
『これが私《わたくし》の妻《つま》春枝《はるえ》。』と私《わたくし》に紹介《ひきあは》せ、更《さら》に夫人《ふじん》に向《むか》つて、私《わたくし》と彼《かれ》とが昔《むかし》おなじ學《まな》びの友《とも》であつた事《こと》、私《わたくし》が今回《こんくわい》の旅行《りよかう》の次第《しだい》、また之《これ》から日本《につぽん》まで夫人等《ふじんら》と航海《かうかい》を共《とも》にするやうになつた不思議《ふしぎ》の縁《ゆかり》を言葉《ことば》短《みじか》に語《かた》ると、夫人《ふじん》は『おや。』と言《い》つたまゝいと懷《なつ》かし氣《げ》に進《すゝ》み寄《よ》る。年《とし》の頃《ころ》廿六七、眉《まゆ》の麗《うる》はしい口元《くちもと》の優《やさ》しい丁度《ちやうど》天女《てんによ》の樣《やう》な美人《びじん》、私《わたくし》は一目《ひとめ》見《み》て、此《この》夫人《ふじん》は其《その》容姿《すがた》の如《ごと》く、心《こゝ
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