するのである。更《さら》に想《おも》ひめぐらすと此度《このたび》の事件《こと》は、何《なに》から何《なに》まで小説《せうせつ》のやうだ。海外《かいぐわい》萬里《ばんり》の地《ち》で、ふとした事《こと》から昔馴染《むかしなじみ》の朋友《ともだち》に出逢《であ》つた事《こと》、それから私《わたくし》は此《この》港《みなと》へ來《き》た時《とき》は、恰《あだか》も彼《かれ》の夫人《ふじん》と令息《れいそく》とが此處《こゝ》を出發《しゆつぱつ》しやうといふ時《とき》で、申合《まうしあは》せたでもなく、同《おな》じ時《とき》に、同《おな》じ船《ふね》に乘《の》つて、之《これ》から數《すう》ヶ|月《げつ》の航海《かうかい》を倶《とも》にするやうな運命《うんめい》に立到《たちいた》つたのは、實《じつ》に濱島《はまじま》の云《い》ふが如《ごと》く、之《これ》が不思議《ふしぎ》なる天《てん》の紹介《ひきあはせ》とでもいふものであらう、斯《か》う思《おも》つて、暫時《しばし》或《ある》想像《さうざう》に耽《ふけ》つて居《ゐ》る時《とき》、忽《たちま》ち部室《へや》の戸《と》を靜《しづ》かに開《ひら》いて入
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