ぽん》へ皈《かへ》つて後《のち》も、何呉《なにく》れ御面倒《ごめんどう》を願《ねが》ひますよ。』
此《この》話《はなし》で何事《なにごと》も分明《ぶんめい》になつた。それに就《つ》けても濱島武文《はまじまたけぶみ》は昔《むかし》ながら壯快《おもしろ》い氣象《きしやう》だ、たゞ一人《ひとり》の兒《こ》を帝國《ていこく》の軍人《ぐんじん》に養成《ようせい》せんが爲《た》めに恩愛《おんあい》の覊《きづな》を斷切《たちき》つて、本國《ほんごく》へ送《おく》つてやるとは隨分《ずゐぶん》思《おも》ひ切《き》つた事《こと》だ。また松島海軍大佐《まつしまかいぐんたいさ》の令妹《れいまい》なる彼《かれ》の夫人《ふじん》にはまだ面會《めんくわい》はせぬが、兄君《あにぎみ》の病床《やまひ》を見舞《みま》はんが爲《た》めに、暫時《しばし》でも其《その》良君《おつと》に別《わかれ》を告《つ》げ、幼《いとけな》き兒《こ》を携《たづさ》へて、浪風《なみかぜ》荒《あら》き萬里《ばんり》の旅《たび》に赴《おもむ》くとは仲々《なか/\》殊勝《しゆしよう》なる振舞《ふるまひ》よと、心《こゝろ》竊《ひそ》かに感服《かんぷく》
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