氣《びやうき》ではあるまいが、妻《つま》も唯《たゞ》一人《ひとり》の兄《あに》であれば、能《あた》ふ事《こと》なら自《みづか》ら見舞《みまひ》もし、久《ひさし》ぶりに故山《こざん》の月《つき》をも眺《なが》めたいとの願望《ねがひ》、丁度《ちやうど》小兒《せうに》のこともあるので、然《しか》らば此《この》機會《をり》にといふので、二人《ふたり》は今夜《こんや》の十一|時《じ》半《はん》の弦月丸《げんげつまる》で出發《しゆつぱつ》といふ事《こと》になつたのです。無論《むろん》、妻《つま》は大佐《たいさ》の病氣《びやうき》次第《しだい》で早《はや》かれ遲《おそ》かれ歸《かへ》つて來《き》ますが、兒《こ》は永《なが》く/\――日本帝國《につぽんていこく》の天晴《あつぱ》れ軍人《ぐんじん》として世《よ》に立《た》つまでは、芙蓉《ふよう》の峯《みね》の麓《ふもと》を去《さ》らせぬ積《つもり》です。』と、語《かた》り終《をは》つて、彼《かれ》は靜《しづ》かに私《わたくし》の顏《かほ》を眺《なが》め
『で、君《きみ》も今夜《こんや》の御出帆《ごしゆつぱん》ならば、船《ふね》の中《なか》でも、日本《につ
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