に向直《むきなほ》り
『實《じつ》は斯《か》うなんですよ。』と小膝《こひざ》を進《すゝ》めた。
『私《わたくし》が此《この》港《みなと》へ貿易商會《ぼうえきしやうくわい》を設立《たて》た翌々年《よく/\とし》の夏《なつ》、鳥渡《ちよつと》日本《につぽん》へ皈《かへ》りました。其頃《そのころ》君《きみ》は暹羅《サイアム》漫遊中《まんゆうちゆう》と承《うけたまは》つたが、皈國中《きこくちゆう》、或《ある》人《ひと》の媒介《なかだち》で、同郷《どうきやう》の松島海軍大佐《まつしまかいぐんたいさ》の妹《いもと》を妻《つま》に娶《めと》つて來《き》たのです。これは既《すで》に十|年《ねん》から前《まへ》の事《こと》で、其後《そのゝち》に生《うま》れた兒《こ》も最早《もはや》八歳《はつさい》になりますが、さて、私《わたくし》の日頃《ひごろ》の望《のぞみ》は、自分《じぶん》は斯《か》うして、海外《かいぐわい》に一商人《いつしやうにん》として世《よ》に立《た》つて居《を》るものゝ、小兒《せうに》丈《だ》けはどうか日本帝國《につぽんていこく》の干城《まもり》となる有爲《りつぱ》な海軍々人《かいぐん/″\
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