た。
『つい昔話《むかしばなし》の面白《おもしろ》さに申遲《まうしおく》れたが、實《じつ》は早急《さつきふ》なのですよ、今夜《こんや》十一|時《じ》半《はん》の※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]船《きせん》で日本《くに》へ皈《かへ》る一方《いつぱう》なんです。』
『えい、君《きみ》も?。』と彼《かれ》は眼《め》を見張《みは》つて。
『矢張《やはり》今夜《こんや》十一|時《じ》半《はん》出帆《しゆつぱん》の弦月丸《げんげつまる》で?。』
『左樣《さやう》、殘念《ざんねん》ながら、西班牙《イスパニヤ》や、亞弗利加《アフリカ》の方《はう》は今度《こんど》は斷念《だんねん》しました。』と、私《わたくし》がキツパリと答《こた》へると、彼《かれ》はポンと膝《ひざ》を叩《たゝ》いて
『やあ、奇妙《きめう》々々。』
何《なに》が奇妙《きめう》なのだと私《わたくし》の審《いぶか》る顏《かほ》を眺《なが》めつゝ、彼《かれ》は言《ことば》をつゞけた。
『何《な》んと奇妙《きめう》ではありませんか、これ等《ら》が天《てん》の紹介《ひきあはせ》とでも云《い》ふものでせう、實《じつ》は私《わたくし》の
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