》へるので、若《も》しや、今日《けふ》は不時《ふじ》の混雜中《こんざつちう》ではあるまいかと氣付《きづ》いたから、私《わたくし》は急《きふ》に顏《かほ》を上《あ》げ
『何《なに》かお急《いそ》がしいのではありませんか。』と問《と》ひかけた。
『イヤ、イヤ、决《けつ》して御心配《ごしんぱい》なく。』と彼《かれ》は此時《このとき》珈琲《カツヒー》を一口《ひとくち》飮《の》んだが、悠々《ゆう/\》と鼻髯《びぜん》を捻《ひね》りながら
『何《なに》ね、實《じつ》は旅立《たびだ》つ者《もの》があるので。』
オヤ、何人《どなた》が何處《どこ》へと、私《わたくし》が問《と》はんとするより先《さき》に彼《かれ》は口《くち》を開《ひら》いた。
『時《とき》に柳川君《やながはくん》、君《きみ》は當分《たうぶん》此《この》港《みなと》に御滯在《おとまり》でせうねえ、それから、西班牙《イスパニヤ》の方《はう》へでもお廻《まは》りですか、それとも、更《さら》に歩《ほ》を進《すゝ》めて、亞弗利加《アフリカ》探險《たんけん》とでもお出掛《でか》けですか。』
『アハヽヽヽ。』と私《わたくし》は頭《つむり》を掻《か》い
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