》平穩《おだやか》な海上《かいじやう》で難破《なんぱ》するやうな船《ふね》は全《まつた》く我等《われ/\》海員《かいゐん》の仲間以外《なかまはづれ》です、何《なに》も面倒《めんだう》な目《め》を見《み》て救助《きうじよ》に赴《おもむ》く義務《ぎむ》は無《な》いのです。』と言《い》つて空嘯《そらぶ》き笑《わら》つた
最早《もはや》問答《もんだう》も無益《むえき》と思《おも》つたから、私《わたくし》は突然《ゐきなり》船長《せんちやう》を船室《ケビン》の外《そと》へ引出《ひきだ》した
『あれが見《み》えませんか、あれが、あの悲慘《ひさん》なる信號《しんがう》の光《ひかり》を見《み》て何《なに》とも感《かん》じませんか。』とばかり、遙《はる》かに指《ゆびさ》す左舷船尾《さげんせんび》の海上《かいじやう》。私《わたくし》は『あツ。』と叫《さけ》んだまゝ暫時《しばらく》開《あ》いた[#「開《あ》いた」は底本では「開《あ》たい」]口《くち》も塞《ふさ》がらなかつたよ。審《いぶ》かしや。今《いま》から二分《にふん》三分《さんぷん》前《まへ》までは確《たしか》に閃々《せん/\》と空中《くうちう》に飛《と
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