《なに》を見《み》たもありません、本船《ほんせん》左舷《さげん》後方《こうほう》の海上《かいじやう》に當《あた》つて星火榴彈《せいくわりうだん》に一次《いちじ》一發《いつぱつ》の火箭《くわせん》、それが難破船《なんぱせん》の信號《しんがう》である位《くらゐ》を知《し》りませんか。』
『其樣《そんな》事《こと》は承《うけたまは》る必要《ひつえう》もありません。』と船長《せんちやう》は鼻《はな》で笑《わら》ひつゝ
『それは大方《おほかた》貴下《あなた》の眼《め》の誤《あやま》りでせうよ。うふゝゝゝ。』
『眼《め》の誤《あやま》り※[#疑問符感嘆符、1−8−77] 之《これ》は怪《け》しからん、私《わたくし》にはちやんと二個《ふたつ》の眼《め》がありますぞ。』
『其《その》眼《め》が怪《あや》しい、海《うみ》の上《うへ》ではよく眩惑《ごまか》されます、貴下《あなた》は屹度《きつと》流星《りうせい》の飛《と》ぶのでも見《み》たのでせう。』とビール樽《だる》のやうな腹《はら》を突出《つきだ》して
『いや、よしんば其《それ》が眞個《ほんたう》の難破信號《なんぱしんがう》であつたにしろ、此樣《こんな
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