は私《わたくし》の持病《やまひ》、疳癪玉《かんしやくだま》が一時《いちじ》に破裂《はれつ》したよ。
『無《な》い、無《な》い、無《な》いとは何《なん》です、私《わたくし》は今《いま》現《げん》に目撃《もくげき》して來《き》たのです。』
『はゝゝゝゝ。何《なに》を目撃《もくげき》しましたか。はゝゝゝゝ。』と彼《かれ》は空惚《そらとぼ》けて大聲《おほごえ》に笑《わら》つた。私《わたくし》は實《じつ》に腹《はら》の中《なか》から※[#「睹のつくり/火」、第3水準1−87−52]返《にへかへ》つたよ。序《ついで》だから言《い》つて置《お》くが、私《わたくし》は初《はじ》め此《この》船《ふね》に乘組《のりく》んだ時《とき》から一見《いつけん》して此《この》船長《せんちやう》はどうも正直《しようじき》な人物《じんぶつ》では無《な》いと思《おも》つて居《を》つたが果《はた》して然《しか》り、彼《かれ》は今《いま》、多少《たせう》の勞《らう》を厭《いと》ふて他船《たせん》の危難《きなん》をば見殺《みころ》しにする積《つもり》だなと心付《こゝろつ》いたから、私《わたくし》は激昂《げきこう》のあまり
『何
前へ 次へ
全603ページ中131ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング