ば》して卓上《たくじやう》の葉卷《シユーガー》を取上《とりあげ》た。私《わたくし》は迫込《せきこ》み
『理屈《りくつ》を申《まう》すぢやありません、私《わたくし》の越權《えつけん》は私《わたくし》が責任《せきにん》を負《お》ひます。貴下《あなた》は信《しん》じませんか、今《いま》現《げん》に難破船《なんぱせん》が救助《きゆうじよ》を求《もとめ》て居《を》るのを。』
『信《しん》じません、信《しん》ぜられません。』と船長《せんちやう》は今《いま》取上《とりあ》げた葉卷《シユーガー》を腹立《はらた》たし氣《げ》に卓上《たくじやう》に投《な》げ返《かへ》して
『當番《たうばん》水夫《すゐふ》からは何等《なにら》の報告《ほうこく》の無《な》い内《うち》は决《けつ》して信じません。况《いわ》んや此樣《こんな》平穩《おだやか》な海上《かいじやう》に難破船《なんぱせん》などのあらう筈《はづ》は無《な》い、無※[#「(禾+尤)/上/日」、79−6]《ばか》なツ。』
『無※[#「(禾+尤)/上/日」、79−7]《ばか》なツ。』と私《わたくし》は勃然《むつ》としてしまつた。日頃《ひごろ》から短氣《たんき》
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