》に報告《ほうこく》するなどは海上《かいじやう》の法則《はふそく》から言《い》つて、到底《たうてい》許《ゆる》す可《べ》からざる事《こと》である。私《わたくし》も其《それ》を知《し》らぬではない、けれど今《いま》は容易《ようゐ》ならざる急變《きふへん》の塲合《ばあひ》である、一|分《ぷん》一|秒《びやう》の遲速《ちそく》は彼方《かなた》難破船《なんぱせん》のためには生死《せいし》の堺界《わかれめ》かも知《し》れぬ、加《くは》ふるに本船《ほんせん》右舷《うげん》の當番《たうばん》水夫《すゐふ》は眼《め》あれども眼無《めな》きが如《ごと》く、左舷《さげん》の當番《たうばん》水夫《すゐふ》は鬼《おに》か蛇《じや》か、知《し》つて知《し》らぬ顏《かほ》の其《その》心《こゝろ》は分《わか》らぬが、今《いま》は瞬間《しゆんかん》も躊躇《ちうちよ》すべき塲合《ばあい》でないと考《かんが》へたので、私《わたくし》は一散《いつさん》に走《はし》つて、船橋《せんけう》の下部《した》なる船長室《せんちやうしつ》の扉《ドーア》を叩《たゝ》いた。
『船長閣下《せんちやうかくか》、起《お》き玉《たま》へ、難破船《
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