んぱん》の模樣《もやう》や、檣上《しやうじやう》に飜《ひるがへ》る旗章《はたじるし》や、また彼方《かなた》の波止塲《はとば》から此方《こなた》へかけて奇妙《きめう》な風《ふう》の商舘《しやうくわん》の屋根《やね》などを眺《なが》め廻《まわ》しつゝ、たゞ譯《わけ》もなく考想《かんが》へて居《を》る内《うち》にふと思《おも》ひ浮《うか》んだ一事《こと》がある。それは濱島武文《はまじまたけぶみ》といふ人《ひと》の事《こと》で。
濱島武文《はまじまたけぶみ》とは私《わたくし》がまだ高等學校《かうとうがくかう》に居《を》つた時分《じぶん》、左樣《さやう》かれこれ十二三|年《ねん》も前《まへ》の事《こと》であるが、同《おな》じ學《まな》びの友《とも》であつた。彼《かれ》は私《わたくし》よりは四つ五つの年長者《としかさ》で、從《したがつ》て級《くみ》も異《ちが》つて居《を》つたので、始終《しじう》交《まぢは》るでもなかつたが、其頃《そのころ》校内《かうない》で運動《うんどう》の妙手《じやうず》なのと無暗《むやみ》に冐險的旅行《ぼうけんてきりよかう》の嗜好《すき》なのとで、彼《かれ》と私《わたくし》と
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