は指《ゆび》を折《を》られ、從《したがつ》て何《なに》ゆゑとなく睦《むつ》ましく離《はな》れがたく思《おも》はれたが、其後《そのゝち》彼《かれ》は學校《がくかう》を卒業《そつぎやう》して、元來《ぐわんらい》ならば大學《だいがく》に入《い》る可《べ》きを、他《た》に大望《たいもう》ありと稱《しよう》して、幾何《いくばく》もなく日本《ほんごく》を去《さ》り、はじめは支那《シナ》に遊《あそ》び、それから歐洲《をうしう》を渡《わた》つて、六七|年《ねん》以前《いぜん》の事《こと》、或《ある》人《ひと》が佛京巴里《フランスパリ》の大博覽會《だいはくらんくわい》で、彼《かれ》に面會《めんくわい》したとまでは明瞭《あきらか》だが、私《わたくし》も南船北馬《なんせんほくば》の身《み》の其後《そのゝち》の詳《つまびらか》なる消息《せうそく》を耳《みゝ》にせず、たゞ風《かぜ》のたよりに、此頃《このごろ》では、伊太利《イタリー》のさる繁華《はんくわ》なる港《みなと》に宏大《りつぱ》な商會《しやうくわい》を立《た》てゝ、專《もつぱ》ら貿易事業《ぼうえきじげふ》に身《み》を委《ゆだ》ねて居《を》る由《よし》、お
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