ある》物《もの》に向《むか》つては、世界最強力《せかいさいきようりよく》のガツトリング[#「ガツトリング」に傍線]機砲《きほう》でも、カ子ー[#「カ子ー」に傍線]砲《ほう》でも、些少《させう》の打撃《だげき》をも加《くわ》ふる事《こと》が出來《でき》ぬのである。况《いわ》んや此《この》海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》は、波威《はてい》に沈降《ちんかう》する事《こと》三十|呎《フヒート》乃至《ないし》五十|呎《フヒート》、其《その》潜行《せんかう》を持續《ぢぞく》し得《う》る時間《じかん》は無制限《むせいげん》であるから、一度《ひとたび》此《この》軍艇《ぐんてい》に睥睨《にら》まれたる軍艦《ぐんかん》は、恰《あだか》も昔物語《むかしがたり》の亞剌比亞《アラビヤ》の沙漠《さばく》の大魔神《だいましん》に魅《みゐ》られたる綿羊《めんよう》のごとく、遁《のが》れんとして遁《のが》るゝ能《あた》はず、鬪《たゝか》はんか、速射砲《そくしやほう》もガツトリング[#「ガツトリング」に傍線]砲《ほう》も到底《とうてい》力《ちから》及《およ》ばぬ海底《かいてい》の此《この》大怪物《だいくわいぶつ》を奈何《いか》せん。此方《こなた》海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》は、我《われ》に敵抗《てきこう》する艦隊《かんたい》ありと知《し》らば、戰鬪凖備《せんとうじゆんび》を整《とゝの》ふる間《ま》も疾《と》しや遲《おそ》しや、敵艦《てきかん》若《も》し非裝甲軍艦《ひさうかうぐんかん》ならば、併列水雷發射機《へいれつすいらいはつしやき》を使用《しよう》する迄《まで》もなく、かの驚《おどろ》くべき三尖衝角《さんせんしやうかく》を絞車《こうしや》の如《ごと》く廻旋《くわいせん》して、一撃《いちげき》突進《とつしん》、敵艦《てきかん》を粉韲《ふんさい》する事《こと》を得可《うべ》く、敵艦《てきかん》若《も》し十四|吋《インチ》以上《いじやう》の裝甲軍艦《さうかうぐんかん》ならば、艇《てい》は逆浪《げきらう》怒濤《どたう》の底《そこ》を電光《でんくわう》の如《ごと》く駛航《しかう》しつゝ、鏡《かゞみ》に映《うつ》る敵情《てきじやう》を察《さつ》して、發射廻旋輪《はつしやくわいせんりん》の一轉《いつてん》又《また》一轉《いつてん》右舷《うげん》左舷《さげん》より發射《はつしや》する新式魚形水雷《しんしきぎよけいすいらい》は一|分時間《ぷんじかん》に七十八|發《ぱつ》。今《いま》三十|隻《せき》[#ルビの「せき」は底本では「きせ」]の一等戰鬪艦《いつとうせんとうかん》をもつて組織《そしき》されたる一大《いちだい》艦隊《かんたい》と雖《いへど》も、日《ひ》出《い》でゝ鳥《とり》鳴《な》かぬ内《うち》に、滅盡《めつじん》する事《こと》が出來《でき》るであらう。
あゝ、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》! 海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》! 此《この》驚《おどろ》くべく、恐《おそ》るべき一《いち》軍艇《ぐんてい》は今《いま》や我《わ》が大日本帝國《だいにつぽんていこく》の海軍《かいぐん》の列《れつ》に加《くわ》はらんが爲《た》めに、此《この》絶島《ぜつたう》の不思議《ふしぎ》なる海底《かいてい》の造船所《ざうせんじよ》内《ない》に於《おい》て、櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》の指揮《しき》の下《した》に、秘《ひそ》かに製造《せいざう》[#ルビの「せいざう」は底本では「せいさう」]されつゝあるのである。讀者《どくしや》諸君《しよくん》! 私《わたくし》は此《この》海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》[#ルビの「かいていせんとうてい」は底本では「かていせんとうてい」]が他日《たじつ》首尾《しゆび》よく竣工《しゆんこう》して、翩飜《へんぽん》[#「翩飜《へんぽん》」は底本では「翻飜《へんぽん》」]たる帝國軍艦旗《ていこくぐんかんき》[#ルビの「ていこくぐんかんき」は底本では「ていこぐんかんき」]を艇尾《ていび》に飜《ひるがへ》しつゝ、蒼波《さうは》漫々《まん/\》たる世界《せかい》の海上《かいじやう》に浮《うか》んだ時《とき》、果《はた》して如何《いか》なる戰爭《せんさう》に向《むか》つて第一《だいいち》に使用《しよう》され、また如何《いな》に目醒《めざ》ましき奮鬪《ふんとう》をなすやは多《おほ》く言《い》ふ必要《ひつえう》もあるまいと考《かんが》へる。
さても、私《わたくし》が櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》と武村兵曹《たけむらへいそう》の案内《あんない》に從《したが》つて、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の縱覽《じゆうらん》を終《をは》つて後《のち》、再《ふたゝ》び艇外《ていぐわい》に出《い》でたのは、かれこれ二時間《にじかん》程《ほど》後《あと》であつた。それ
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