、其間《そのま》に、大佐《たいさ》より命令《めいれい》のあつた吾等《われら》の居室《ゐま》の準備《じゆんび》も出來《でき》たので、其處《そこ》に導《みちび》かれ、久々《ひさ/″\》にて寢臺《ねだい》の上《うへ》へ横《よこたは》つた。はじめの間《あひだ》は日出雄少年《ひでをせうねん》も私《わたくし》も互《たがひ》に顏《かほ》を見合《みあは》せては此《この》不思議《ふしぎ》なる幸運《かううん》をよろこび、大佐等《たいさら》の懇切《こんせつ》なる待遇《もてなし》を感謝《かんしや》しつゝ、いろ/\と物語《ものがた》つて居《を》つたが、何時《いつ》か十|數日《すうにち》以來《いらい》の烈《はげ》しき疲勞《つかれ》の爲《た》めに、知《し》らず/\深《ふか》き夢《ゆめ》に落《お》ちた。

    第十三回 星影《ほしかげ》がちら/\
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歡迎《ウエルカム》――春枝夫人は屹度死にません――此新八が先鋒ぢや――浪の江丸の沈沒――此島もなか/\面白いよ――三年の後
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 それから幾時間《いくじかん》眠《ねむ》つたか知《し》らぬが、不意《ふゐ》に私《わたくし》の枕邊《まくらもと》で
『サア、賓客《おきやくさん》、もう暗《くら》くなりましたぜ、大佐閣下《たいさかくか》もひどくお待兼《まちかね》で、それに、夕食《ゆふしよく》の御馳走《ごちさう》も悉皆《すつかり》出來《でき》て、料理方《れうりかた》の浪三《なみざう》めが、鳥《とり》の丸燒《まるやき》が黒焦《くろこげ》になるつて、眼玉《めだま》を白黒《しろくろ》にして居《ゐ》ますぜ。』と大聲《おほごゑ》に搖醒《ゆりさま》すものがあるので、愕《おどろ》いて目《め》を醒《さま》すと、此時《このとき》日《ひ》は全《まつた》く暮《く》れて、部室《へや》の玻璃窓《がらすまど》を透《たう》して、眺《なが》むる海《うみ》の面《おも》には、麗《うる》はしき星影《ほしかげ》がチラ々々と映《うつ》つて居《を》つた。
私《わたくし》を呼醒《よびさま》したのは快活《くわいくわつ》なる武村兵曹《たけむらへいそう》であつた。其《その》右手《めて》に縋《すが》つて、可憐《かれん》なる日出雄少年《ひでをせうねん》はニコ/\しながら
『叔父《おぢ》さん、私《わたくし》はもう顏《かほ》を洗《あら》つて來《き》ましてよ。』と、睡醒《ねざめ》に澁《しぶ》る私《わたくし》の顏《かほ》を仰《あほ》いだ。オヤ/\、少年《せうねん》にまで寢太郎《ねたらう》と見《み》られたかと、私《わたくし》は急《いそ》ぎ清水《しみづ》に顏《かほ》を淨《きよ》め、兵曹《へいそう》の案内《あんない》に從《したが》つて用意《ようゐ》の一室《ひとま》へ來《き》て見《み》ると、食卓《しよくたく》の一端《いつたん》には、櫻木大佐《さくらぎたいさ》は二三の重立《おもだ》つた水兵《すいへい》を相手《あひて》に、談話《はなし》に耽《ふけ》つて居《を》つたが、吾等《われら》の姿《すがた》を見《み》るより、笑《えみ》を此方《こなた》に向《む》け
『武村《たけむら》が、とう/\御安眠《ごあんみん》を妨害《ぼうがい》しましたね。』と、水兵《すいへい》に命《めい》じて二個《にこ》の倚子《ゐす》を近寄《ちかよ》せた。
食卓《テーブル》の對端《むかふ》には、武村兵曹《たけむらへいそう》他《ほか》三名《さんめい》の水兵《すいへい》が行儀《ぎようぎ》よく列《なら》び、此方《こなた》には、日出雄少年《ひでをせうねん》を中《なか》に挿《はさ》んで、大佐《たいさ》と私《わたくし》とが右《みぎ》と左《ひだり》に肩《かた》を並《なら》べて、頓《やが》て晩餐《ばんさん》は始《はじ》まつた。洋燈《らんぷ》の光《ひかり》は煌々《くわう/\》と輝《かゞや》いて、何時《いつ》の間《ま》にか、武骨《ぶこつ》なる水兵等《すいへいら》が、優《やさ》しい心《こゝろ》で飾立《かざりた》てた挿花《さしばな》や、壁間《かべ》に『歡迎《ウエルカム》』と巧妙《たくみ》に作《つく》られた橄欖《かんらん》の緑《みどり》の葉《は》などを、美《うつ》くしく照《てら》して居《を》る。かゝる孤島《はなれじま》の事《こと》だから、御馳走《ごちさう》は無《な》いがと大佐《たいさ》の言譯《いひわけ》だが、それでも、料理方《れうりかた》の水兵《すいへい》が大奮發《だいふんぱつ》の由《よし》で、海鼈《すつぽん》の卵子《たまご》の蒸燒《むしやき》や、牡蠣《かき》の鹽※[#「睹のつくり/火」、第3水準1−87−52]《しほに》や、俗名《ぞくめう》「イワガモ」とかいふ此《この》島《しま》に澤山《たくさん》居《を》る鴨《かも》に似《に》て、一層《いつそう》味《あぢ》の輕《かろ》い鳥《とり》の丸燒《まるやき》などはなか/\の御馳走
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