《をど》らんばかり、我《わが》軍艦《ぐんかん》「日《ひ》の出《で》」の士官《しくわん》水兵《すいへい》は、舷門《げんもん》より、檣樓《しやうらう》より、戰鬪樓《せんとうらう》より、双手《て》を擧《あ》げ、旗《はた》を振《ふ》り、歡呼《くわんこ》をあげて、勇《いさ》み、歡《よろこ》び、をとり立《た》つ、濱島武文《はまじまたけぶみ》、春枝夫人《はるえふじん》は餘《あま》りの※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しさに聲《こゑ》もなく、虎髯大尉《こぜんたいゐ》、武村兵曹《たけむらへいそう》、一人《ひとり》は右鬢《うびん》に、一人《ひとり》は左鬢《さびん》に、微《かす》かな傷《きづ》に白《しろ》鉢卷《はちまき》、私《わたくし》は雀躍《こをどり》しながら、倶《とも》に眺《なが》むる黎明《れいめい》の印度洋《インドやう》、波上《はじやう》を亘《わた》る清《すゞ》しい風《かぜ》は、一陣《いちじん》又《また》一陣《いちじん》と吹《ふき》來《きた》つて、今《いま》しも、海蛇丸《かいだまる》を粉韲《ふんさい》したる電光艇《でんくわうてい》は、此時《このとき》徐《しづ》かに艇頭《ていとう》を廻《めぐ》らして此方《こなた》に近《ちか》づいて來《き》たが、あゝ、其《その》光譽《ほまれ》ある觀外塔上《くわんぐわいたふじやう》を見《み》よ※[#感嘆符三つ、373−3] 色《いろ》の黒《くろ》い、筋骨《きんこつ》の逞《たく》ましい、三十|餘名《よめい》の慓悍《へうかん》無双《ぶさう》なる水兵《すいへい》を後《うしろ》に從《したが》へて、雄風《ゆうふう》凛々《りん/\》たる櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》は、籠手《こて》を翳《かざ》して我《わが》軍艦《ぐんかん》「日《ひ》の出《で》」の甲板《かんぱん》を眺《なが》めて居《を》る。其《その》傍《かたはら》には、日出雄少年《ひでをせうねん》は、例《れい》の水兵《すいへい》姿《すがた》で、左手《ひだり》は猛犬《まうけん》「稻妻《いなづま》」の首輪《くびわ》を捕《とら》へ、右手《ゆんで》は翩飜《へんぽん》と海風《かいふう》に飜《ひるが》へる帝國軍艦旗《ていこくぐんかんき》を抱《いだ》いて、その愛《あい》らしい、勇《いさ》ましい顏《かほ》は、莞爾《につこ》と此方《こなた》を仰《あほ》いで居《を》つたよ。
       ――――〜〜〜
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