うれい》を待《ま》つ、舷門《げんもん》の邊《ほとり》、砲門《ほうもん》の邊《ほとり》、慓悍《へうかん》無双《ぶさう》の水兵等《すいへいら》は腕《うで》を摩《さす》つて居《を》る。濱島《はまじま》は冷然《れいぜん》と笑《わら》ひ、春枝夫人《はるえふじん》は默然《もくねん》とした。
我《わ》が勇《いさ》ましき武村兵曹《たけむらへいそう》は怒髮《どはつ》天空《てんくう》を衝《つ》き
『えい、ふざけたり/\、海賊《かいぞく》共《ども》、眼《め》に物《もの》見《み》せて呉《く》れんづ。』と矢庭《やには》に左舷《さげん》八|吋《インチ》速射砲《そくしやほう》の方《ほう》へ馳《は》せたが、忽《たちま》ち心付《こゝろづ》いた、夫《そ》れ海軍々律《かいぐんぐんりつ》は嚴《げん》として泰山《たいざん》の如《ごと》し、たとへ非凡《ひぼん》の手腕《しゆわん》ありとも艦員《かんゐん》ならぬものが砲《ほう》を動《うご》かし、銃《じう》を發《はな》つ事《こと》は出來《でき》ないのである。兵曹《へいそう》無念《むねん》の切齒《はがみ》をなし、
『えい、殘念《ざんねん》だ/\、此樣《こん》な時《とき》、本艦《ほんかん》の水兵《すいへい》が羨《うらや》ましい。』と叫《さけ》んだまゝ、空拳《くうけん》を振《ふ》つて本艦々頭《ほんかんかんとう》に仁王立《にわうだち》、轟大尉《とゞろきたいゐ》は虎髯《こぜん》逆立《さかだ》ち眦《まなじり》裂《さ》けて、右手《ゆんで》に握《にぎ》る十二|珊《サンチ》砲《ほう》の撃發機《げきはつき》は唯《た》だ艦長《かんちやう》の一令《いちれい》を待《ま》つばかり。
艦長松島海軍大佐《かんちやうまつしまかいぐんたいさ》は此時《このとき》ちつとも[#「ちつとも」に傍点]騷《さは》がず[#「騷《さは》がず」は底本では「騷《さは》がす」]、平然《へいぜん》として指揮《しき》する信號《しんがう》の言《ことば》、信號兵《しんがうへい》は命《めい》を奉《ほう》じて信號旗《しんがうき》を高《たか》く掲《かゝ》げた。
「愚《おろか》なり、海賊《かいぞく》! 我《わが》縱帆架《ガーフ》に飜《ひるがへ》る大日本帝國軍艦旗《だいにつぽんていこくぐんかんき》を見《み》ずや。」と。忽《たちま》ち海蛇丸《かいだまる》滿船《まんせん》の電燈《でんとう》はパツと消《き》えた。同時《どうじ》に七|隻《せき》の海
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