》は果《はた》して一同《いちどう》其《その》方《ほう》へ向《むか》つた。
一度《ひとたび》戰鬪樓《せんとうらう》の方《ほう》へ走《はし》り去《さ》つた虎髯大尉《こぜんたいゐ》は此時《このとき》再《ふたゝ》び私《わたくし》の傍《そば》へ歸《かへ》つて來《き》たが大聲《おほごゑ》に
『奇怪《きくわい》な船《ふね》! 奇怪《きくわい》な船《ふね》! あの船《ふね》は我《わが》軍艦《ぐんかん》に向《むか》つて、何《なに》か信號《しんがう》を試《こゝろ》みんとして居《を》る。』と叫《さけ》んだ。實《じつ》に前後《ぜんご》の形勢《けいせい》と、かの七|隻《せき》の船《ふね》の有樣《ありさま》とで見《み》ると、今《いま》や海蛇丸《かいだまる》は明《あきらか》に何事《なにごと》をか我《わが》軍艦《ぐんかん》に向《むか》つて信號《しんがう》を試《こゝろ》みる積《つもり》だらう。けれど私《わたくし》は審《いぶ》かつた。今日《こんにち》世界《せかい》の海上《かいじやう》に於《おい》ては、晝間《ちゆうかん》の萬國信號《ばんこくしんがう》はあるが、夜間信號《やかんしんがう》は、各國《かくこく》の海軍《かいぐん》に於《おい》て、各自《めい/\》に秘密《ひみつ》なる信號《しんがう》を有《いう》する他《ほか》、難破信號《なんぱしんがう》とか、今《いま》海蛇丸《かいだまる》の揚《あ》げた爆發信號《ばくはつしんがう》のやうな、極《きは》めて重大《ぢゆうだい》なるまた單純《たんじゆん》なるものを除《のぞ》いては、萬國《ばんこく》共通《けうつう》のものは無《な》いのである。然《さ》れば奇怪《きくわい》の船《ふね》、我《われ》に信號《しんがう》を試《こゝろ》みんとならば、果《はた》して如何《いか》なる手段《しゆだん》をか取《と》ると瞻《なが》めて居《を》ると、忽《たちま》ち見《み》る、海蛇丸《かいだまる》の、檣上《しやうじやう》、檣下《しやうげ》、船首《せんしゆ》、船尾《せんび》、右舷《うげん》、左舷《さげん》に閃々《せん/\》たる電燈《でんとう》輝《かゞや》き出《い》でゝ、滿船《まんせん》を照《てら》す其《その》光《ひかり》は白晝《はくちう》を欺《あざむ》かんばかり、其《その》光《ひかり》の下《した》に一個《いつこ》の異樣《ゐやう》なる人影《ひとかげ》現《あら》はれて、忽《たちま》ち檣桁《しやうかう》高《
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