男《をとこ》、三|年《ねん》の在學中《ざいがくちう》、常《つね》に分隊《ぶんたい》の第《だい》一|番《ばん》漕手《さうしゆ》として、漕力《さうりよく》天下無比《てんかむひ》と云《い》はれた腕前《うでまへ》。
『そら來《こ》い!。』とばかり、ヒタ[#「ヒタ」に傍点]と武村兵曹《たけむらへいそう》の所謂《いはゆる》出刄庖丁《でばほうちやう》の入《はい》つて居《を》る脛《すね》に己《おの》が鐵《てつ》の脛《すね》を合《あは》せて、双方《さうほう》眞赤《まつか》になつてエンヤ/\と押合《おしあ》つたが勝負《しようぶ》が付《つ》かない、甲板《かんぱん》の一同《いちどう》は面白《おもしろ》がつてヤンヤ/\と騷《さわ》ぐ
『もう廢《よ》せ/\、足《あし》が折《を》れるぞ/\。』と虎髯大尉《こぜんたいゐ》は二人《ふたり》の周圍《めぐり》をぐる/\廻《まは》つて、結局《とう/\》引分《ひきわけ》になつた。
艦橋《かんけう》よりは艦長松島海軍大佐《かんちやうまつしまかいぐんたいさ》、例《れい》によつて例《れい》の如《ごと》く鼻髯《びぜん》を捻《ひね》りつゝ、微笑《びせう》を浮《うか》べて眺《なが》めて居《を》つた。
第三十回 月夜《げつや》の大海戰《だいかいせん》
[#ここから5字下げ]
印度國コロンボ[#「コロンボ」に二重傍線]の港――滿艦の電光――戰鬪喇叭――惡魔印の海賊旗――大軍刀をブン/\と振廻した――大佐來! 電光艇來! 朝日輝く印度洋
[#ここで字下げ終わり]
かくて、軍艦《ぐんかん》「日《ひ》の出《で》」は、其《その》翌々晩《よく/\ばん》は豫定通《よていどう》りに、印度大陸《インドたいりく》の西岸《せいがん》コロンボ[#「コロンボ」に二重傍線]の港《みなと》に寄港《きかう》して、艦長松島海軍大佐《かんちやうまつしまかいぐんたいさ》と、私《わたくし》と、武村兵曹《たけむらへいそう》とは、椰子《やし》や芭蕉《ばせう》の林《はやし》は低《ひく》く海岸《かいがん》を蔽《おほ》ひ、波止塲《はとば》のほとりから段々《だん/″\》と高《たか》く、電燈《でんとう》の光《ひかり》は白晝《まひる》を欺《あざむ》かんばかりなる市街《しがい》に上陸《じやうりく》して、竊《ひそ》かに櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》より委任《ゐにん》を受《う》けたる、電光艇《でんくわうてい》用《
前へ
次へ
全302ページ中286ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング