》蜻蛉洲《あきつしま》は茜《あかね》さす。東《ひがし》の海《うみ》の離《はな》れ島《じま》。例《たと》へば海《うみ》の只中《たゞなか》に。浮《うか》べる船《ふね》にさも似《に》たり――。」と、高《たか》き調《しらべ》は荒鷲《あらわし》の、風《かぜ》を搏《たゝ》いて飛《と》ぶごとく、低《ひく》き調《しらべ》は溪水《たにみづ》の、岩《いは》に堰《せ》かれて泣《な》く如《ごと》く、檣頭《しやうとう》を走《はし》る印度洋《インドやう》の風《かぜ》、舷《げん》に碎《くだ》くる波《なみ》の音《おと》に和《わ》して、本艦々上《ほんかんかんじやう》、暫時《しばし》は鳴《なり》も止《や》まなかつた。
琵琶《びは》の調《しら》べが終《をは》ると、虎髯大尉《こぜんたいゐ》は忽《たちま》ち大拍手《だいはくしゆ》をした。
『うまい/\、本物《ほんもの》ぢや、よし、よし、あんまり安賣《やすうり》をすな。』とばかり身《み》を跳《をど》らして
『兵曹《へいそう》、どうぢや一番《いちばん》腕押《うでおし》は――。』と鐵《てつ》の樣《やう》な腕《うで》を突出《つきだ》した。虎髯大尉《こぜんたいゐ》の腕押《うでおし》と來《き》たら有名《いうめい》なものである。けれど武村兵曹《たけむらへいそう》はちつとも[#「ちつとも」に傍点]知《し》らない、自分《じぶん》も大《だい》の力自慢《ちからじまん》。
『よろしい、參《まい》りませう。』と琵琶《びは》投《な》げ捨《す》てゝ、一番《いちばん》鬪《たゝか》つたが、忽《たちま》ちウンと捩《ねぢ》り倒《たを》された。
『弱《よは》いなア。』と大尉《たいゐ》は大《おほい》に笑《わら》ふ。
『ど、ど、如何《どう》したんだらう、こ、此《この》武村《たけむら》をお負《ま》かしなすつたな、『どれもう一番《いちばん》――。』と鬪《たゝか》つたが、また負《まけ》た。
『こんな筈《はづ》ではないのだが。』と腕《うで》を摩《さす》つて見《み》たが、迚《とて》も叶《かな》ひ相《さう》もない。きよろ[#「きよろ」に傍点]/\しながら四方《しほう》を見廻《みま》はすと、「日《ひ》の出《で》」の士官《しくわん》水兵等《すいへいら》はくす[#「くす」に傍点]/\笑《わら》つて居《を》る、濱島武文《はまじまたけぶみ》はから[#「から」に傍点]/\笑《わら》つて居《を》る、春枝夫人《はるえふじん》は手
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