、いつも滑※[#「(禾+尤)/上/日」、353−5]《こつけい》と失策《しつさく》との本家本元《ほんけほんもと》で――今《いま》は私《わたくし》の傍《そば》に、威勢《ゐせい》よく話《はなし》の相槌《あひづち》を打《う》つて居《を》る武村兵曹《たけむらへいそう》は、幾度《いくたび》か軍艦《ぐんかん》日《ひ》の出《で》の水兵等《すいへいら》に、背中《せなか》叩《たゝ》かれ、手《て》を叩《たゝ》かれて、艦中《かんちう》第一《だいいち》の愛敬者《あいけふもの》とはなつた。
武村兵曹《たけむらへいそう》は今《いま》は私《わたくし》と同《おな》じやうに、此《この》軍艦《ぐんかん》の賓客《ひんきやく》ではあるが、彼《かれ》は軍艦《ふね》を家《いへ》とする水兵《すいへい》の身《み》――水兵《すいへい》の中《うち》にも氣象《きしやう》勝《すぐ》れ、特《こと》に砲術《ほうじゆつ》、航海術《かうかいじゆつ》には際立《きはだ》つて巧妙《たくみ》な男《をとこ》なので、かく軍艦《ぐんかん》に乘組《のりく》んでは一刻《いつこく》も默念《じつ》とはして居《を》られぬ、かつは艦長松島海軍大佐《かんちやうまつしまかいぐんたいさ》を始《はじ》め軍艦《ぐんかん》「日《ひ》の出《で》」の全員《ぜんゐん》が、自分《じぶん》の最《もつと》も敬愛《けいあい》する櫻木大佐《さくらぎたいさ》のために誠心《まごゝろ》から盡力《じんりよく》して呉《く》れるのが、心《こゝろ》から※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しく、難有《ありがた》く、せめて報恩《ほうおん》の萬分《まんぶん》の一《いち》には、此《この》軍艦《ぐんかん》の水兵等《すいへいら》と同《おな》じ樣《やう》に働《はたら》きたいと、頻《しき》りに心《こゝろ》を焦立《いらだ》てたが、海軍《かいぐん》の軍律《ぐんりつ》は嚴《げん》として動《うご》かす可《べ》からず、本艦《ほんかん》在役《ざいえき》の軍人《ぐんじん》ならねば檣樓《しやうらう》に昇《のぼ》る事《こと》も叶《かな》はず、機關室《きくわんしつ》に働《はたら》く事《こと》も能《あた》はず、詮方無《せんかたな》きまゝ、立《た》つて見《み》つ、居《ゐ》て見《み》つ、艦首《かんしゆ》から縹渺《へうべう》たる太洋《たいやう》の波濤《なみ》を眺《なが》めたり、「ブルワーク」の邊《ほとり》から縱帆架
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