郵便船《いうびんせん》に救《すく》はれて、廻《めぐ》りめぐつて、再《ふたゝ》びネープルス[#「ネープルス」に二重傍線]の家《いへ》へ皈《かへ》つたのは、夫《それ》から一月《ひとつき》程《ほど》※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、335−8]《すぎ》ての事《こと》でした。』
夫人《ふじん》は一息《ひといき》つきて
『妾《わたくし》が子ープルス[#「子ープルス」に二重傍線]の家《いへ》へ歸《かへ》つて、涙《なみだ》ながらに良人《をつと》の濱島《はまじま》に再會《さいくわい》した時《とき》には、弦月丸《げんげつまる》の沈沒《ちんぼつ》の噂《うわさ》は大層《たいそう》でした。何事《なにごと》も天命《てんめい》と諦《あきら》めても、本當《ほんたう》に悲《かな》しう御坐《ござ》んしたよ。いろ/\の噂《うわさ》を聞《き》くにつけ、最早《もはや》貴方《あなた》も、日出雄《ひでを》も、全《まつた》く世《よ》に亡《な》き人《ひと》とのみ思《おも》ひ定《さだ》め、また、一方《いつぽう》には、本國《ほんごく》の兄《あに》の病《やまひ》を思《おも》ひ煩《わずら》つて居《を》りましたが、幸《さひは》ひ、兄《あに》の病《やまひ》はだん/″\と快方《くわいほう》の由《よし》、其後《そのご》の便船《びんせん》で通知《つうち》が參《まい》りましたので、其《その》方《ほう》は漸《やうや》く胸《むね》撫《な》でおろし、日本《につぽん》へ皈《かへ》る事《こと》も其儘《そのまゝ》思《おも》ひ止《とゞま》つたのです。それから四年※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、336−4]《よねんす》ぎての今《いま》、圖《はか》らずも貴方《あなた》に再會《さいくわい》して、いろ/\のお話《はなし》を伺《うかゞ》つて見《み》ると、まるで夢《ゆめ》のやうで、霖雨《ながあめ》の後《のち》に天日《てんじつ》を拜《はい》するよりも嬉《うれ》しく、たゞ/\天《てん》に感謝《かんしや》するの他《ほか》はありません。はい、兄《あに》の病氣《びやうき》は、妾《わたくし》が子ープルス[#「子ープルス」に二重傍線]に歸《かへ》つてから、三月《みつき》程《ほど》※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、336−8]《すぎ》て、名殘《なごり》なく全快《ぜんくわい》して、今《いま》は人一倍《ひといちばい》に健全《すこやか》に、英
前へ 次へ
全302ページ中268ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング