夢《ゆめ》ぢやありませんとも/\。』と武骨《ぶこつ》なる武村兵曹《たけむらへいそう》は、此時《このとき》ヒヨツコリと顏《かほ》を突出《つきだ》した。
『貴夫人《きふじん》! 何《な》んで夢《ゆめ》だなんぞと仰《お》つしやる。あの可憐《かれん》なる日出雄少年《ひでをせうねん》は、今《いま》は我《わ》が敬愛《けいあい》する櫻木海軍大佐閣下《さくらぎかいぐんたいさかくか》と共《とも》に朝日島《あさひじま》に元氣《げんき》よく、今頃《いまごろ》は屹度《きつと》、例《れい》の可愛《かあい》らしい樣子《やうす》で、水兵《すいへい》共《ども》や、愛犬《あいけん》の稻妻《いなづま》なんかと、海岸《かいがん》の岩《いわ》の上《うへ》から、遙《はる》かに日本《につぽん》の空《そら》を眺《なが》めて、早《はや》く孤島《こたう》を出發《しゆつぱつ》して、一日《いちにち》も速《すみや》かに貴方等《あなたがた》に再會《さいくわい》したいと待望《まちのぞ》んで居《を》る事《こと》でせう。』と叫《さけ》ぶ。
『貴方《あなた》は――。』と二人《ふたり》の眼《まなこ》は懷《なつ》かし相《さう》に武村兵曹《たけむらへいそう》の上《うへ》に轉《てん》じた。
『此人《このひと》は武村兵曹《たけむらへいそう》とて、吾等《われら》が三年《さんねん》の間《あひだ》孤島《こたう》の生活中《せいくわつちう》、日出雄少年《ひでをせうねん》とは極《きは》めて仲《なか》のよかつた一人《ひとり》です。』と私《わたくし》は彼《かれ》を二人《ふたり》に紹介《ひきあは》せて、それより武村兵曹《たけむらへいそう》と私《わたくし》とは交《かは》る/″\、朝日島《あさひじま》へ漂流《へうりう》の次第《しだい》、稀世《きせい》の海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の事《こと》、孤島《こたう》生活中《せいくわつちう》の有樣《ありさま》、それから四年《よねん》以前《いぜん》には、穉氣《あどけ》なく母君《はゝぎみ》と別《わか》れたりし日出雄少年《ひでをせうねん》の今《いま》は大《おほ》きくなりて、三年《さんねん》の間《あひだ》、智勇《ちゆう》絶倫《ぜつりん》の櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》の愛育《あいいく》の下《した》に、何《なに》から何《なに》まで、父君《ちゝぎみ》が甞《かつ》て望《のぞ》める如《ごと》き海軍々人《かいぐんぐんじん》風《
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