櫻木大佐《さくらぎたいさ》と、其《その》海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》のに會《あひ》合《あ》ふべき筈《はづ》の、橄欖島《かんらんたう》附近《ふきん》の地勢《ちせい》、海深等《かいしんとう》を調《しら》ぶるに餘念《よねん》もなかつた。
暫時《ざんじ》、船室《せんしつ》内《ない》は寂《しん》となる。
室外《しつぐわい》には舷《げん》に碎《くだ》くる浪《なみ》の音《おと》、檣頭《しやうとう》に走《はし》る風《かぜ》の聲《こゑ》、艦橋《ブリツヂ》に響《ひゞ》く士官《しくわん》の號令《がうれい》。
私《わたくし》は何氣《なにげ》なく倚子《ゐす》より離《はな》れて、檣樓《しやうらう》に、露砲塔《ろほうたふ》に、戰鬪樓《せんとうらう》に、士官《しくわん》水兵《すいへい》の活動《はたらき》目醒《めざ》ましき甲板《かんぱん》を眺《なが》めたが、忽《たちま》ち電氣《でんき》に打《う》たれし如《ごと》く躍上《をどりあが》つたよ。今《いま》しも、後部甲板《こうぶかんぱん》昇降口《しやうかうぐち》より現《あら》はれて、一群《いちぐん》の肩章《けんしやう》に波《なみ》を打《う》たせたる年少《ねんせう》士官等《しくわんら》と語《かた》りながら、徐《しづ》かに此方《こなた》に來《き》かゝる二個《ふたり》の人《ひと》――軍艦々上《ぐんかん/\じやう》には珍《めづ》らしき平服《へいふく》の姿《すがた》、一個《ひとり》は威風堂々《ゐふうどう/\》たる肥滿《ひまん》の紳士《しんし》、他《た》の一個《ひとり》は天女《てんによ》の如《ごと》き絶世《ぜつせ》の佳人《かじん》! 誰《たれ》か知《し》らん、此《この》二人《ふたり》は、四|年《ねん》以前《いぜん》にネープルス[#「ネープルス」に二重傍線]で別《わか》れた濱島武文《はまじまたけぶみ》と、今《いま》は此世《このよ》に亡《な》き人《ひと》とのみ思《おも》つて居《を》つた彼《かれ》の妻《つま》――松島大佐《まつしまたいさ》の令妹《れいまい》――日出雄少年《ひでをせうねん》の母君《はゝぎみ》なる春枝夫人《はるえふじん》であつた。
急《いそ》ぎ眼《め》を押拭《おしぬぐ》つて見《み》たが、矢張《やはり》其人《そのひと》※[#感嘆符三つ、326−6]
私《わたくし》は狂喜《きやうき》のあまり、唐突《いきなり》武村兵曹《たけむらへいそう》の首《くび》を捻《ね》ぢ向
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