た。『諾《だく》。』と應《こた》えたまゝ、身《み》を飜《ひるが》へして前甲板《ぜんかんぱん》の方《かた》へ走《はし》り去《さ》つた。
松島大佐《まつしまたいさ》は再《ふたゝ》び海圖《かいづ》の面《めん》に向《むか》つた。
此時《このとき》中部甲板《ちうぶかんぱん》には、午前《ごぜん》十一|時《じ》を報《ほう》ずる六點鐘《ろくてんしやう》、カヽン! カヽン! カヽン! カヽン! カヽン! カヽン!
武村兵曹《たけむらへいそう》と私《わたくし》とは、實《じつ》に双肩《さうけん》の重荷《おもに》を降《おろ》した樣《やう》な心地《こゝち》がしたのである。實《じつ》に、※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しい、※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しい、※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しい。
此《この》※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しい時《とき》――すでに我《わ》が大使命《だいしめい》をば語《かた》り終《をは》つたる今《いま》、一個人《わたくし》の事《こと》ではあるが、私《わたくし》は松島海軍大佐《まつしまかいぐんたいさ》に向《むか》つて、問《と》ひもし、語《かた》りもしたき事《こと》は澤山《たくさん》ある。大佐《たいさ》の令妹《れいまい》春枝夫人《はるえふじん》の安否《あんぴ》――其《その》良君《をつと》濱島武文《はまじまたけぶみ》の消息《せうそく》――それより前《さき》に私《わたくし》から語《かた》らねばならぬのは(大佐《たいさ》は屹度《きつと》死《し》んだと思《おも》つて居《を》るだらう)※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、324−12]去《くわこ》三|年《ねん》の間《あひだ》、私《わたくし》と共《とも》に朝日島《あさひじま》の月《つき》を眺《なが》めて、今《いま》も猶《な》ほ健康《すこやか》で居《を》る彼《かれ》の娚《をい》なる日出雄少年《ひでをせうねん》の消息《せうそく》である。
私《わたくし》は幾度《いくたび》か口《くち》を開《ひら》きかけたが、此時《このとき》大佐《たいさ》の顏色《がんしよく》は、私《わたくし》が突然《にはか》に此事《このこと》を言《い》ひ出《だ》し兼《か》ねた程《ほど》、海圖《かいづ》に向《むか》つて熱心《ねつしん》に、頓《やが》て
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