《げん》もなく、東天《とうてん》の一方《いつぽう》を眺《なが》めたが、忽《たちま》ち腕拱《うでこま》ぬき
『して、櫻木君《さくらぎくん》の一行《いつかう》は意外《ゐぐわい》の天變《てんぺん》のために、來《きた》る二十五|日《にち》拂曉《ふつげう》、橄欖島《かんらんたう》の附近《ふきん》にて貴下等《きから》の應援《おうえん》を待《ま》つのですか、よろしい、斯《か》く承《うけたま》はる以上《いじやう》は最早《もはや》憂慮《いうりよ》するには及《およ》びません。日本帝國《につぽんていこく》のため、帝國海軍《ていこくかいぐん》のため、また櫻木大佐《さくらぎたいさ》の光譽《くわうよ》のために、我等《われら》は全力《ぜんりよく》を盡《つく》して電光艇《でんくわうてい》の應援《おうえん》に赴《おもむ》きませう。』と立《た》つて傍《かたはら》なる卓上《たくじやう》に一面《いちめん》の海圖《かいづ》を押擴《おしひろ》げ、具《つぶ》さに緯度《ゐど》を計《はか》りつゝ
『此處《こゝ》から最《もつと》も便宜《べんぎ》なる、また最《もつと》も近《ちか》き貿易港《ぼうえきかう》は矢張《やはり》印度國《インドこく》コロンボ[#「コロンボ」に二重傍線]の港《みなと》で、海上《かいじやう》大約《おほよそ》千二百|哩《マイル》、それより橄欖島《かんらんたう》までは千五百|哩《マイル》弱《じやく》、されば、本艦《ほんかん》は明後晩《めうごばん》コロンボ[#「コロンボ」に二重傍線]に錨《いかり》を投《とう》じ、電光艇《でんくわうてい》に必要《ひつえう》なる十二の秘密藥液《ひみつやくえき》を凖備《じゆんび》して、直《たゞ》ちに暗號電報《あんがうでんぽう》をもつて本國《ほんごく》政府《せいふ》の許可《きよか》を受《う》け、全速力《ぜんそくりよく》をもつて橄欖島《かんらんたう》へ向《むか》ふ事《こと》が出來《でき》ます、さらば!。』とばかり側《かたばら》の虎髯大尉《こぜんたいゐ》に向《むか》ひ、
『轟大尉《とゞろきたいゐ》! 本艦《ほんかん》全速力《ぜんそくりよく》、方向《ほうかう》は矢張《やはり》コロンボ[#「コロンボ」に二重傍線]港《かう》、右《みぎ》號令《がうれい》を傳《つた》へて下《くだ》さい※[#感嘆符三つ、323−12]。』
虎髯大尉《こぜんたいゐ》、本名《ほんめい》は轟大尉《とゞろきたいゐ》であつ
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