よく存《ぞん》じて居《を》ります。五年《ごねん》前《まへ》、彼《かれ》が横須賀《よこすか》の軍港《ぐんかう》に於《おい》て永《なが》き袂別《わかれ》を私《わたくし》に告《つ》ぐる時《とき》、彼《かれ》は决然《けつぜん》たる顏色《がんしよく》を以《もつ》て言《い》つたです「今《いま》より五|年《ねん》の後《のち》には、必《かなら》ず一大《いちだい》功績《こうせき》を立《た》てゝ、君《きみ》に再會《さいくわい》する事《こと》が出來《でき》るだらう」と。それから五|年《ねん》の星霜《せいさう》は※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、320−8]去《すぎさ》つたが、未《ま》だ彼《かれ》の消息《せうそく》は少《すこ》しも聞《きこ》えません、其間《そのあひだ》、私《わたくし》は一日《いちにち》でも彼《かれ》の健康《けんこう》と、彼《かれ》の大事業《だいじげふ》の成功《せいこう》とを祈《いの》らぬ時《とき》はないのです。あゝ、櫻木君《さくらぎくん》は遂《つひ》に其《その》大目的《だいもくてき》を達《たつ》しましたらうか。彼《かれ》が潜心苦慮《せんしんくりよ》せる大軍器《だいぐんき》は遂《つひ》に首尾《しゆび》よく竣成《しゆんせい》しましたらうか。』と言《い》ひながら、聲《こゑ》を沈《しづ》まし
『けれど、私《わたくし》は今《いま》、時《とき》ならぬ輕氣球《けいきゝゆう》を此《この》印度洋上《インドやうじやう》に認《みと》め、特《こと》に其《その》乘組人《のりくみにん》の一人《ひとり》は櫻木大佐《さくらぎたいさ》の片腕《かたうで》と言《い》はれた武村兵曹《たけむらへいそう》であつたので想《かんが》へると、今《いま》や孤島《こたう》の櫻木君《さくらぎくん》の身邊《しんぺん》には、何《なに》か非常《ひじやう》の異變《ゐへん》が起《おこ》つて、其爲《そのため》に貴君等《きくんら》兩人《りやうにん》は大佐《たいさ》と袂別《わかれ》を告《つ》げ、一|大《だい》使命《しめい》を帶《お》びて此《この》空中《くうちう》を飛行《ひかう》して來《き》たのではありませんか。』と眤《じつ》と吾等《われら》兩人《りようにん》を見詰《みつ》めた。
『其事《そのこと》! 實《じつ》に御明察《ごめいさつ》の通《とう》りです。』と私《わたくし》はツト身《み》を進《すゝ》めた。武村兵曹《たけむらへいそう》は胸
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