り》は冐險家《ぼうけんか》らしい紳士《しんし》風《ふう》で、他《た》の一人《ひとり》は同《おな》じ海軍《かいぐん》の兵曹《へいそう》である事《こと》も知《しつ》て居《を》つたと見《み》え、今《いま》、吾等《われら》の前《まへ》に立《た》つて、武村兵曹《たけむらへいそう》と私《わたくし》との顏《かほ》を眺《なが》めたが、左迄《さまで》驚《おどろ》く色《いろ》がない、目禮《もくれい》をもつて傍《かたはら》の倚子《ゐす》に腰《こし》打《う》ち掛《か》け、鼻髯《びぜん》を捻《ひね》つて靜《しづ》かに此方《こなた》に向直《むきなを》つた。
兵曹《へいそう》と私《わたくし》とは、恭《うや/\》しく敬禮《けいれい》を施《ほどこ》しつゝ、ふと[#「ふと」に傍点]、其人《そのひと》の顏《かほ》を眺《なが》めたが、あゝ、此《この》艦長《かんちやう》の眼元《めもと》――其《その》口元《くちもと》――私《わたくし》が甞《かつ》て記臆《きおく》せし、誰人《たれ》かの懷《なつ》かしい顏《かほ》に、よくも/\似《に》て居《を》る事《こと》と思《おも》つたが、咄嗟《とつさ》の急《きふ》には思《おも》ひ浮《うか》ばなかつた。何《なに》は兎《と》もあれ、今《いま》、かく心《こゝろ》が落付《おちつ》いて見《み》ると、今度《こんど》吾等《われら》が此《この》大危難《だいきなん》をば、同《おな》じ日本人《につぽんじん》の――しかも忠勇《ちうゆう》義烈《ぎれつ》なる帝國海軍々人《ていこくかいぐんぐんじん》の手《て》によつて救《すく》はれたのは、實《じつ》に吾等《われら》兩人《りようにん》の幸福《こうふく》のみではない、天《てん》は今《いま》やかの朝日島《あさひたう》に苦《くるし》める櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》の誠忠《せいちう》をば遂《つひ》に見捨《みす》てなかつたかと、兩人《ふたり》は不測《そゞろ》に感涙《かんるい》の流《なが》るゝ樣《やう》に覺《おぼ》えて、私《わたくし》は垂頭《うつむ》き、武村兵曹《たけむらへいそう》は顏《かほ》を横向《よこむ》けると、此時《このとき》吾等《われら》の傍《かたはら》に、何《なに》か艦長《かんちやう》の命《めい》を聽《き》かんとて、姿勢《しせい》を正《たゞ》して立《た》てる三四|名《めい》の水兵《すいへい》は、先刻《せんこく》より熱心《ねつしん》に武村兵曹《たけむ
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