》噸《とん》の巨艦《きよかん》ゆらり/\と高《たか》く、低《ひく》く、我《わ》が端艇《たんてい》は秋《あき》の木《こ》の葉《は》のごとく波浪《なみ》に跳《をど》つて、迚《とて》も左舷々梯《さげんげんてい》に寄着《よりつ》く事《こと》が出來《でき》ない。水煙《すいゑん》は飛《と》ぶ、逆浪《さかなみ》は打込《うちこ》む、見上《みあ》ぐる舷門《げんもん》の邊《ほとり》、「ブルワーク」のほとり、士官《しくわん》、水兵《すいへい》頻《しき》りに叫《さけ》んで、我《わ》が艇尾《ていび》の大尉《たいゐ》は舵《ラタ》の柄《え》を碎《くだ》けんばかりに握《にぎ》り詰《つ》めて、奈落《ならく》に落《お》ち、天空《てんくう》に舞《ま》ひ、艇《てい》は幾度《いくたび》か艦《かん》の水線甲帶《すいせんかうたい》に碎《くだ》けんとしたが、漸《やうや》くの事《こと》で起重機《きぢゆうき》をもつて、我等《われら》十|餘人《よにん》の乘《の》れるまゝ端艇《たんてい》が「日《ひ》の出《で》」の甲板《かんぱん》に引揚《ひきあ》げられた時《とき》には、はじめてホツ[#「ホツ」に傍点]と一息《ひといき》ついたよ。本艦《ほんかん》は一令《いちれい》の下《した》に推進螺旋《スクルー》波《なみ》を蹴《け》つて進航《しんかう》を始《はじ》めた。規律《きりつ》正《たゞ》しき軍艦《ぐんかん》の甲板《かんぱん》、かゝる活劇《さわぎ》の間《あひだ》でも决《けつ》して其《その》態度《たいど》を亂《みだ》す樣《やう》な事《こと》はない。
『輕氣球《けいきゝゆう》が天空《てんくう》より落《お》ちた。本艦《ほんかん》より端艇《たんてい》を下《おろ》した。救《すく》ひ上《あ》げたる二個《ふたり》の人《ひと》は日本人《につぽんじん》である。一人《ひとり》は冐險家《ぼうけんか》らしい年少《ねんせう》の紳士《ゼントルマン》、他《た》の一人《ひとり》は我《わ》が海軍《かいぐん》の兵曹《へいそう》である。いぶかしや、何故《なにゆゑ》ぞ。』と、此《この》噂《うはさ》は早《はや》くも軍艦《ぐんかん》「日《ひ》の出《で》」の全體《ぜんたい》に傳《つたは》つたが、誰《た》れも其《その》本分《ほんぶん》を忘《わす》れて「どれ、どんな男《をとこ》だ」などゝ、我等《われら》の側《そば》に飛《と》んで來《く》る樣《やう》な不規律《ふきりつ》な事《こと》は少《
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