み》を切《き》る音《おと》と共《とも》に、本艦《ほんかん》指《さ》して矢《や》のやうに進《すゝ》んだ。
私《わたくし》と武村兵曹《たけむらへいそう》とは夢《ゆめ》に夢見《ゆめみ》る心地《こゝち》。自分《じぶん》が濡鼠《ぬれねずみ》の樣《やう》になつて居《を》る事《こと》も、少《すく》なからず潮水《しほみづ》を飮《の》んで腹《はら》が苦《くる》しくなつて居《を》る事《こと》も忘《わす》れて、胸《むね》は驚《おどろき》と悦《よろこび》に、跳《をど》りつゝ、眤《じつ》と眺《なが》むる前方《かなた》の海上《かいじやう》、「ガーフ」に懷《なつ》かしき我《わ》が帝國《ていこく》の軍艦旗《ぐんかんき》を飜《ひるがへ》せるかの白色《はくしよく》の巡洋艦《じゆんやうかん》は、此邊《このへん》海底《かいてい》深《ふか》くして、錨《いかり》を投《たう》ずることも叶《かな》はねば、恰《あだか》も小山《こやま》の動搖《ゆる》ぐが如《ごと》く、右《みぎ》に左《ひだり》に漂蕩《へうたう》して居《を》る。此《この》軍艦《ふね》、排水《はいすい》噸數《とんすう》二千七百ばかり、二本《にほん》烟筒《ゑんとう》の極《きは》めて壯麗《さうれい》なる裝甲巡洋艦《さうかうじゆんやうかん》である。今《いま》しも波浪《なみ》に揉《も》まれて、此方《こなた》に廻《まは》りし其《その》艦尾《かんび》には、赫々《かく/\》たる日輪《にちりん》に照《てら》されて「日の出[#「日の出」に蛇の目傍点]」の三|字《じ》が鮮《あざや》かに讀《よ》まれた。軍艦《ぐんかん》日《ひ》の出《で》! 軍艦《ぐんかん》日《ひ》の出《で》! と私《わたくし》は何故《なぜ》ともなく二|度《ど》三|度《ど》口《くち》の中《うち》で繰返《くりかへ》す内《うち》に、端艇《たんてい》はだん/\と本艦《ほんかん》に近《ちか》くなる。軍艦《ぐんかん》「日《ひ》の出《で》」の甲板《かんぱん》では、後部艦橋《こうぶかんけう》のほとりより軍艦旗《ぐんかんき》飜《ひるがへ》る船尾《せんび》に到《いた》るまで、多《おほ》くの乘組《のりくみ》は、列《れつ》を正《たゞ》して、我《わが》端艇《たんてい》の歸艦《きかん》を迎《むか》へて居《を》る。
頓《やが》て本艦《ほんかん》の間際《まぎは》になつたが、海《うみ》は盤水《ばんすい》を動《うご》かすがごとく、二千七百|餘《よ
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