いつかく》に、雲《くも》か、煙《けぶり》のやうに、大陸《たいりく》の影《かげ》が認《みと》められた。私《わたくし》と武村兵曹《たけむらへいそう》とは眼《め》[#ルビの「め」は底本では「み」]を見合《みあ》はせて、はじめてホツと一息《ひといき》ついた。あの大陸《たいりく》は、疑《うたがひ》も無《な》き印度《インド》の大陸《たいりく》であらう。すると、今《いま》から三四|時間《じかん》の後《のち》には、目的《もくてき》のコロンボ[#「コロンボ」に二重傍線]市《し》の附近《ふきん》に降下《かうか》して、櫻木大佐《さくらぎたいさ》より委任《いにん》されたる、此度《このたび》の大役《たいやく》をも首尾《しゆび》よく果《はた》す事《こと》が出來《でき》るであらうと、互《たがひ》に喜悦《きえつ》の眉《まゆ》を展《ひら》く時《とき》しも、又々《また/\》一大《いちだい》異變《ゐへん》が起《おこ》つた。それは他《ほか》でも無《な》い、今迄《いまゝで》は恰《あだか》も天《てん》の恩惠《おんけい》の如《ごと》く、極《きは》めて順當《じゆんたう》に、南《みなみ》から北《きた》へと、吾《わ》が輕氣球《けいきゝゆう》をだん/″\陸地《りくち》の方《ほう》へ吹《ふ》き送《おく》つて居《を》つた風《かぜ》が、此時《このとき》、俄然《がぜん》として、東《ひがし》から西《にし》へと變《かは》つた事《こと》である。はじめ朝日島《あさひじま》を出《い》づる時《とき》、櫻木大佐《さくらぎたいさ》は天文《てんもん》を觀測《くわんそく》して、多分《たぶん》此《この》三四|日《か》の間《あひだ》は、風位《ふうゐ》に激變《げきへん》は無《な》からうと言《い》はれたが、天《てん》の仕業《しわざ》程《ほど》豫知《よち》し難《がた》いものはない。此《この》東風《ひがしかぜ》が吹《ふ》いて來《き》た爲《ため》に、吾《わ》が輕氣球《けいきゝゆう》は、忽《たちま》ち進行《しんかう》の方向《ほうかう》を變《へん》じて、今度《こんど》は、陸《りく》の方面《ほうめん》[#ルビの「ほうめん」は底本では「ほんめん」]から斜《なゝめ》に、海洋《かいやう》の方《ほう》へと吹《ふ》きやられた。私《わたくし》と武村兵曹《たけむらへいそう》とは今迄《いまゝで》の喜悦《よろこび》も何處《どこ》へやら、驚愕《おどろき》と憂慮《うれひ》とのために、全《
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