ん。氣球《きゝゆう》の降下《かうか》する處《ところ》は無論《むろん》異邦《ゐほう》の地《ち》、外國語《ぐわいこくご》、其他《そのた》の便宜上《べんぎじやう》、君《きみ》に依頼《ゐらい》するより他《ほか》は無《な》かつたのです。』と左右《さゆう》を顧見《かへりみ》て
『そこで、今《いま》一人《ひとり》助手《じよしゆ》として誰《だれ》か。』
『私《わたくし》が參《まい》ります。』と例《れい》の武村兵曹《たけむらへいそう》は勇躍《ゆうやく》して進《すゝ》み出《で》た。大佐《たいさ》眼《まなこ》を定《さだ》めて眤《じつ》と兵曹《へいそう》の顏《かほ》を眺《なが》め
『汝《なんぢ》、此度《このたび》の使命《しめい》の成敗《せいばい》は、我《わ》が海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》が、日本帝國《につぽんていこく》の守護《まもり》として、世《よ》に現出《げんしゆつ》する事《こと》が出來《でき》るか、否《いな》かの分《わか》れ目《め》であるぞ。極《きは》めて機敏《きびん》に、極《きは》めて愼重《しんちよう》なれ。』
兵曹《へいそう》言《ことば》はなく、涙《なみだ》[#ルビの「なみだ」は底本では「なんだ」]を垂《た》れて大佐《たいさ》の顏《かほ》を見返《みかへ》した。
斯《か》く大使命《だいしめい》の役《やく》も私《わたくし》と武村兵曹《たけむらへいそう》とに定《さだ》まると、本島《ほんたう》に殘《のこ》る櫻木大佐等《さくらぎたいさら》と吾等《われら》兩人《りようにん》との間《あひだ》には、極《きは》めて細密《さいみつ》なる打合《うちあは》せを要《えう》するのである。其《その》打合《うちあは》せは斯《か》うであつた。今日《けふ》は二|月《ぐわつ》の十二|日《にち》、風《かぜ》の方向《ほうかう》は極《きわ》めて順當《じゆんたう》であるから、本日《ほんじつ》輕氣球《けいきゝゆう》が此《この》島《しま》を出發《しゆつぱつ》すれば、印度洋《インドやう》の大空《おほそら》を横斷《わうだん》して、來《きた》る十六|日《にち》か十七|日《にち》には、大陸《たいりく》で一番《いちばん》に近《ちか》い印度國《インドこく》コロンボ[#「コロンボ」に二重傍線]市《し》の附近《ふきん》に降下《かうか》する事《こと》が出來《でき》るであらう。其處《そこ》で秘密藥品《ひみつやくひん》の買入《かひい》れや、船舶《
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