《かくご》。實《じつ》に非常《ひじやう》の手段《しゆだん》ではあるが、今《いま》の塲合《ばあひ》に於《おい》て、目的《もくてき》もなく、希望《きぼう》もなく漸《やうや》く竣成《しゆんせい》せし海底戰鬪艇《かいていせんたうてい》を目前《もくぜん》に瞻《なが》めつゝ、空《むな》しく此《この》孤島《はなれじま》に朽果《くちは》てんよりは、寧《むし》ろ吾等《われら》の採《と》る可《べ》き道《みち》は是《これ》であらう。』と、語《かた》り終《をは》つて、大佐《たいさ》は、决心《けつしん》の色《いろ》動《うご》かし難《がた》く吾等《われら》一同《いちどう》を見《み》た。無論《むろん》大佐《たいさ》の言《げん》に異議《ゐぎ》を挾《はさ》むものゝあらう筈《はづ》は無《な》く、遂《つひ》に此事《このこと》は確定《くわくてい》したが、さて、輕氣球《けいきゝゆう》に乘《の》つて、此《この》大使命《だいしめい》を果《はた》さんものは誰《たれ》ぞといふ段《だん》になつて、勇壯《ゆうさう》なる水兵等《すいへいら》は、吾先《われさき》にと[#「吾先《われさき》にと」は底本では「吾先《われさき》とに」]其《その》任《にん》に當《あた》らんと競《きそ》ひ立《た》つたが、大佐《たいさ》は思《おも》ふ所《ところ》ある如《ごと》く容易《ようゐ》に許《ゆる》さない。實《じつ》に、此《この》大使命《だいしめい》は重大《ぢゆうだい》な事《こと》である。氣球《きゝゆう》がいよ/\大陸《たいりく》の都邑《とゆう》に降下《かうか》して後《のち》、秘密藥品《ひみつやくひん》の買收《ばいしう》から、竊《ひそ》かに船《ふね》に艤裝《ぎさう》して、橄欖島《かんらんたう》へ赴《おもむ》く迄《まで》の間《あひだ》の駈引《かけひき》は尋常《じんじやう》な事《こと》で無《な》い、私《わたくし》は早《はや》くも櫻木大佐《さくらぎたいさ》の心《こゝろ》を讀《よ》み得《え》たので、自《みづか》ら進《すゝ》み出《で》た。
『此《この》大使命《だいしめい》には不肖《ふせう》ながら私《わたくし》が當《あた》りませう。』といふと大佐《たいさ》は大《おほい》に喜《よろこ》び
『實《じつ》は其《その》お言葉《ことば》を待《ま》つて居《を》つたのです。此《この》任務《にんむ》は、單《たん》に勇氣《ゆうき》と、膽力《たんりよく》とのみでは出來《でき》ませ
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