火《ひ》の消《き》えた後《あと》のやうに、淋《さび》しく心細《こゝろぼそ》い光景《くわうけい》。櫻木大佐《さくらぎたいさ》は默然《もくねん》として深《ふか》く考《かんがへ》に沈《しづ》んだ。武村兵曹《たけむらへいそう》は眼中《がんちう》に無念《むねん》の涙《なみだ》を浮《うか》べて、今《いま》も猶《な》ほ多少《たせう》仇浪《あだなみ》の立騷《たちさわ》いで居《を》る海面《かいめん》を睨《にら》んで居《を》る。日出雄少年《ひでをせうねん》はいと/\悲《かな》し相《さう》に
『あゝ、また日本《につぽん》へ皈《かへ》る事《こと》が出來《でき》なくなつたんですか。』と空《むな》しく東《ひがし》の空《そら》を望《のぞ》む、其《その》心《こゝろ》の中《なか》はまあどんなであらう。三十|有餘名《いうよめい》の、日頃《ひごろ》は鬼《おに》とも組《く》まん水兵等《すいへいら》も、今《いま》は全《まつた》く無言《むごん》に、此處《こゝ》に一團《いちだん》、彼處《かしこ》に一團《いちだん》、互《たがひ》に顏《かほ》を見合《みあ》はすばかりで、其中《そのうち》に二三|名《めい》は、萬一《まんいち》にも十二の樽《たる》の中《うち》一つでも、二つでも、海濱《かいひん》に流《なが》れ寄《よ》る事《こと》もやと、甲斐《かひ》/″\しく巡視《じゆんし》に出《で》かけたが、無論《むろん》宛《あて》になる事《こと》では無《な》い。
第二十四回 輕氣球《けいききゆう》の飛行《ひかう》
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絶島の鬼とならねばならぬ――非常手段――私が參ります――無言のわかれ――心で泣いたよ――住馴れた朝日島は遠く/\
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私《わたくし》はつく/″\と考《かんが》へたが、今度《こんど》といふ今度《こんど》こそは、とても免《のが》れぬ天《てん》の禍《わざはひ》であらう。櫻木大佐《さくらぎたいさ》の言《げん》の如《ごと》く、無謀《むぼう》に本島《ほんたう》を離《はな》るゝ事《こと》が出來《でき》ぬものとすれば、他《ほか》に何《なん》の策《さく》も無《な》い。電光艇《でんくわうてい》の活動《くわつどう》の原因《げんゐん》となるべき十二|種《しゆ》の藥液《やくえき》は、何時《いつ》までかゝつても、此樣《こん》な孤島《はなれじま》では製造《せいざう》の出來《でき》るものでなく、また
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