ら餘程《よほど》高《たか》いあの屏風岩《べうぶいわ》の尖頭《せんとう》にも、海草《かいさう》が打上《うちあ》げられた程《ほど》ですから、秘密造船所《ひみつざうせんじよ》の内部《ないぶ》は無論《むろん》海潮《かいてう》の浸入《しんにう》のために、大損害《だいそんがい》を蒙《かうむ》つた事《こと》でせう、それが何《なに》か憂《うれ》ふ可《べ》き事《こと》の原因《げんゐん》となるのですか。』
『無論《むろん》です。』と大佐《たいさ》は胸《むね》に手《て》を措《お》いて
『君《きみ》は忘《わす》れましたか、秘密造船所《ひみつざうせんじよ》の中《なか》には、未《ま》だ海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の生命《せいめい》の殘《のこ》されて居《を》つた事《こと》を。』
『海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》[#「海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》」は底本では「海底戰艇鬪《かいていせんとうてい》」]の生命《せいめい》とは。』と、私《わたくし》は審《いぶか》つた。
『十二の樽《たる》です。君《きみ》も御存《ごぞん》じの如《ごと》く、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の總《すべ》ての機關《きくわん》は、秘密《ひみつ》なる十二|種《しゆ》の化學藥液《くわがくやくえき》の作用《さよう》で活動《くわつどう》するのでせう、其《その》活動《くわつどう》の根源《もと》となる可《べ》き藥液《やくえき》は、盡《ことごと》く十二の樽《たる》に密封《みつぷう》されて、造船所《ざうせんじよ》内《ない》の一部《いちぶ》に貯藏《ちよぞう》されてあつたのだが、あゝ、昨夜《さくや》の大海嘯《おほつなみ》では其《その》一個《いつこ》も無事《ぶじ》では居《を》るまい、イヤ、决《けつ》して無事《ぶじ》で居《を》る筈《はづ》はありません。』
『え、え、え。』と、初《はじ》めて此事《このこと》に氣付《きづ》いた吾等《われら》一|同《どう》は、殆《ほとん》ど卒倒《そつたう》するばかりに愕《おどろ》いた。大佐《たいさ》は深《ふか》き嘆息《ためいき》を洩《もら》して
『恐《おそ》らく私《わたくし》の想像《さうぞう》は誤《あやま》るまい、實《じつ》に天《てん》の禍《わざはひ》は人間《にんげん》の力《ちから》の及《およ》ぶ處《ところ》ではないが、今更《いまさら》斯《かゝ》る災難《さいなん》に遭《あ》ふとは、實《じつ》に無情《なさけな》い
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