ぎ問《と》ひかけた。
『何《なに》か變《かは》つた事《こと》でも起《おこ》りましたか、若《も》しや、昨夜《さくや》の海嘯《つなみ》のために、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》に破損《はそん》でも生《せう》じたのではありませんか。』
『否《いや》。』と大佐《たいさ》は靜《しづ》かに顏《かほ》を上《あ》げた。
『電光艇《でんくわうてい》の船體《せんたい》には、何《なに》も異状《ゐじやう》はありませんが――。』といひながら、眤《じつ》と私《わたくし》の顏《かほ》を眺《なが》めて
『然《しか》し、昨夜《さくや》の海嘯《つなみ》は、吾等《われら》一同《いちどう》を希望《きぼう》の天上《てんじやう》より、絶望《ぜつぼう》の谷底《たにそこ》へ蹴落《けおと》したと思《おも》はれます。』
『な、な、何故《なぜ》ですか。』と、陸《りく》の仲間《なかま》は一時《いちじ》に顏色《がんしよく》を變《か》へたのである。大佐《たいさ》は、直《たゞ》ちに此《この》問《とひ》には答《こた》へんとはせで、頭《かうべ》を廻《めぐ》らして、彼方《かなた》なる屏風岩《べうぶいわ》の方《ほう》を眺《なが》めたが、沈欝《ちんうつ》なる調子《ちようし》で
『君《きみ》は今朝《こんてう》になつて、秘密造船所《ひみつざうせんじよ》[#「秘密造船所《ひみつざうせんじよ》」は底本では「秘密船造所《ひみつざうせんじよ》」]の内部《ないぶ》を檢査《けんさ》しましたか。』
『いや、未《ま》だです。』と私《わたくし》は答《こた》へた。若《も》し、大海嘯《おほつなみ》が今《いま》から二三|日《にち》以前《いぜん》の事《こと》で、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》が未《ま》だ船渠《ドツク》を出《で》ぬ内《うち》なら、第一《だいいち》に警戒《けいかい》すべき塲所《ばしよ》は其處《そこ》だが、今《いま》は、左迄《さま》で急《いそ》いで、檢査《けんさ》する必要《ひつえう》も無《な》いと考《かんが》へたのである。然《しか》るに、大佐《たいさ》の言葉《ことば》と、其《その》顏色《かほいろ》とで察《さつ》すると、其《その》心痛《しんつう》の源《みなもと》は何《な》んでも其處《そこ》に起《おこ》つたらしい、私《わたくし》は急《いそ》ぎ言《げん》をつゞけた。
『未《ま》だ實見《じつけん》はしませんが、御覽《ごらん》の通《とう》り、海面《かいめん》か
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