所《ひみつざうせんじよ》も一時《いちじ》は全《まつた》く海水《かいすい》に浸《ひた》されたと見《み》えて、水面《すいめん》から餘程《よほど》高《たか》い屏風岩《べうぶいわ》の尖頭《せんとう》にも、醜《みにく》き海草《かいさう》の殘《のこ》されて、其《その》海草《かいさう》から滴《したゝ》り落《お》つる水玉《みづたま》に、朝日《あさひ》の光《ひかり》の異樣《ゐやう》に反射《はんしや》して居《を》るなど、實《じつ》に荒凉《くわうりよう》たる有樣《ありさま》であつた。
此時《このとき》、電光艇《でんくわうてい》は遙《はる》かの沖《おき》から海岸《かいがん》に近《ちかづ》き來《きた》り、櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》は、無事《ぶじ》に一隊《いつたい》の水兵《すいへい》と共《とも》に上陸《じやうりく》して來《き》たので、陸上《りくじやう》の一同《いちどう》は直《たゞ》ちに其處《そこ》に驅付《かけつ》けた。吾等《われら》の爲《ため》には、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》が無事《ぶじ》であつた事《こと》が何《な》より※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しい。
私《わたくし》は滿面《まんめん》に笑《えみ》を湛《たゝ》えて大佐《たいさ》の手《て》を握《にぎ》り、かゝる災難《さいなん》の間《あひだ》にも互《たがひ》の身《み》の無事《ぶじ》なりし事《こと》をよろこび、さて
『昨夜《さくや》、海上《かいじやう》の光景《くわうけい》はどんなでしたか。』と言《い》ひながら、しげ/\と大佐《たいさ》の顏《かほ》を眺《なが》めたが、實《じつ》に驚《おどろ》いた。日頃《ひごろ》沈着《ちんちやく》で、何事《なにごと》にも動顛《どうてん》した事《こと》のない大佐《たいさ》の面《おもて》には、此時《このとき》何故《なにゆゑ》か、心痛《しんつう》極《きはま》りなき色《いろ》が見《み》えたのである。大佐《たいさ》ばかりでない、快活《くわいくわつ》なる武村兵曹《たけむらへいそう》も、其他《そのた》の水兵等《すいへいら》も、電光艇《でんくわうてい》より上陸《じやうりく》した一同《いちどう》は、悉《こと/″\》く色蒼《いろあほ》ざめ、頭《かうべ》を垂《た》れて、何事《なにごと》をか深《ふか》く考《かんが》へて居《を》る樣子《やうす》。
私《わたくし》は胸《むね》うたれて、急《いそ》
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