》があらうとは今日《けふ》まで氣付《きづ》かなかつた。特《こと》に櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》の朗々《らう/\》たる詩吟《しぎん》につれて、何時《いつ》覺《おぼ》えたか、日出雄少年《ひでをせうねん》の勇《いさ》ましき劍舞《けんぶ》は當夜《たうや》の華《はな》で、私《わたくし》が無藝《むげい》のために、只更《ひたすら》頭《あたま》を掻《か》いたのと共《とも》に、大拍手《だいはくしゆ》大喝釆《だいかつさい》であつた。
かくて、此《この》會《くわい》の全《まつた》く終《をは》つたのは夜《よる》の十一|時《じ》※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、278−1]《すぎ》であつた。櫻木大佐《さくらぎたいさ》は、すでに海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》も海上《かいじやう》に浮《うか》んだので、其《その》甲板《かんぱん》を守《まも》らんが爲《た》めに、武村兵曹《たけむらへいそう》をはじめ一隊《いつたい》の水兵《すいへい》を引卒《いんそつ》して艇中《ていちう》に赴《おもむ》いた。殘《のこ》り一群《いちぐん》の水兵《すいへい》と、私《わたくし》と、日出雄少年《ひでをせうねん》とは、未《ま》だ艇《てい》に乘組《のりく》む必要《ひつえう》も無《な》いので、再《ふたゝ》び海岸《かいがん》の家《いへ》へ歸《かへ》つたのである。
誰《だれ》でも左樣《さう》だが、非常《ひじやう》に※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しい時《とき》にはとても睡眠《すいみん》などの出來《でき》るものでない。で、家《いへ》に歸《かへ》つたる吾等《われら》の仲間《なかま》は、それからまた一室《ひとま》に集《あつま》つて、種々《しゆ/″\》の雜談《ざうだん》に耽《ふけ》つた。※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]《まど》の硝子越《がらすご》しに海上《かいじやう》を眺《なが》めると、電光艇《でんくわうてい》は星《ほし》の光《ひかり》を浴《あ》びて悠然《いうぜん》と波上《はじやう》に浮《うか》んで居《を》る、あゝ此《この》艇《てい》もかく竣成《しゆんせい》した以上《いじやう》は、今《いま》から一週間《いつしゆうかん》か、十|日《か》以内《いない》には、萬端《ばんたん》の凖備《じゆんび》を終《をは》つて、此《この》島《しま》を出發《しゆつぱつ》する事《こと》が出來《でき》るであらう。
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