わら》ひながら徐《しづ》かに歩《あゆ》み出《だ》すと、一同《いちどう》は吾等《われら》の前後左右《ぜんごさゆう》を取卷《とりま》いて、家路《いへぢ》に迎《むか》ふ。途中《とちう》、武村兵曹《たけむらへいそう》は大得意《だいとくい》で、ヤンヤ/\の喝釆《かつさい》の眞中《まんなか》に立《た》つて、手《て》を振《ふ》り口沫《こうまつ》を飛《とば》して、今回《こんくわい》の冐險譚《ぼうけんだん》をはじめた。此《この》男《をとこ》は正直《せうじき》だから、猛狒《ゴリラ》退治《たいぢ》の手柄話《てがらばなし》は勿論《もちろん》、自分《じぶん》の大失策《おほしくじり》をも、人一倍《ひといちばい》の大聲《おほごゑ》でやツて退《の》けた。
かくて、吾等《われら》は大暴風雨《だいぼうふうう》の後《のち》に、晴朗《うらゝか》な天氣《てんき》を見《み》るやうに、非常《ひじやう》の喜《よろこ》びを以《もつ》て大佐《たいさ》の家《いへ》に着《つ》いた。それから、吾等《われら》が命拾《いのちひろ》ひのお祝《いわ》ひやら、明日《あす》の凖備《じゆんび》やらで大騷《おほさわ》ぎ。

    第二十二回 海《うみ》の禍《わざはひ》
[#ここから5字下げ]
孤島の紀元節――海軍大佐の盛裝――海岸の夜會――少年の劍舞――人間の幸福を嫉む惡魔の手――海底の地滑り――電光艇の夜間信號
[#ここで字下げ終わり]
 二|月《ぐわつ》十一|日《にち》、待《まち》に待《まつ》つたる紀元節《きげんせつ》の當日《たうじつ》とはなつた。前夜《ぜんや》は、夜半《やはん》まで大騷《おほさわ》ぎをやつたが、なか/\今日《けふ》は朝寢《あさね》どころではない。拂曉《ふつげう》に目醒《めさ》めて、海岸《かいがん》へ飛出《とびだ》して見《み》ると、櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》、日出雄少年《ひでをせうねん》武村兵曹等《たけむらへいそうら》は既《すで》に浪打際《なみうちぎわ》を逍遙《せうえふ》しながら、いづれも喜色滿面《きしよくまんめん》だ。大海原《おほうなばら》の東《ひがし》の極《きわみ》から、うら/\と昇《のぼ》つて來《く》る旭《あさひ》の光《ひかり》も、今日《けふ》は格別《かくべつ》に麗《うる》はしい樣《やう》だ。あの日《ひ》の出《い》づる邊《へん》、我《わが》故國《ここく》では今頃《いまごろ》は定《さだ》めて、都大路《
前へ 次へ
全302ページ中218ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング