と果《はた》したにしろ、吾等《われ/\》を此《この》危難《きなん》から救《すく》ひ出《いだ》す事《こと》は、大佐《たいさ》の智惠《ちゑ》でも迚《とて》も及《およ》ばぬのであらうと、私《わたくし》は深《ふか》く心《こゝろ》に决《けつ》したが、今《いま》の塲合《ばあひ》だから何《なに》も言《い》はない。
此時《このとき》不意《ふゐ》に、車外《しやぐわい》の猛獸《まうじう》の群《むれ》は何者《なにもの》にか愕《おどろ》いた樣子《やうす》で、一時《いちじ》に空《そら》に向《むか》つて唸《うな》り出《だ》した。途端《とたん》、何處《いづく》ともなく、微《かす》かに一發《いつぱつ》の銃聲《じうせい》!
一同《いちどう》は飛立《とびた》つて、四方《しほう》を見廻《みまわ》したが、何《なに》も見《み》えない。偖《さて》は心《こゝろ》の迷《まよひ》であつたらうかと、互《たがひ》に顏《かほ》を見合《みあは》す時《とき》、またも一發《いつぱつ》ドガン! ふと、大空《おほぞら》[#ルビの「おほぞら」は底本では「おほそら」]を仰《あほ》いだ武村兵曹《たけむらへいそう》は、破鐘《われがね》のやうに叫《さけ》んだ。
『輕氣球《けいききゆう》! 輕氣球《けいききゆう》!。』
見《み》ると、太陽《たいやう》がキラ/\と輝《かゞや》いて居《を》る東《ひがし》の方《ほう》の、赤裸《あかはだか》の山《やま》の頂《いたゞき》を斜《なゝめ》に掠《かす》めて、一個《いつこ》の大輕氣球《だいけいききゆう》が風《かぜ》のまに/\此方《こなた》に向《むか》つて飛《と》んで來《き》た。
『やア、大佐《たいさ》の叔父《おぢ》さんが、風船《ふうせん》で救《たす》けに來《き》たんだよ/\。』と日出雄少年《ひでをせうねん》は雀躍《じやくやく》した。
『早《はや》く、早《はや》く、先方《むかう》では吾等《われら》を搜索《さうさく》して居《を》るのだ、早《はや》く、此方《こなた》の所在《ありか》を知《し》らせろツ。』と、私《わたくし》が叫《さけ》ぶ聲《こゑ》の下《した》に、武村兵曹《たけむらへいそう》と二名《にめい》の水兵《すいへい》とは、此時《このとき》數個《すうこ》殘《のこ》つて居《を》つた爆裂彈《ばくれつだん》を一時《いちじ》に投《な》げ出《だ》した。山《やま》も、谷《たに》も、一時《いちじ》に顛倒《てんたう》する樣《やう》
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