掉《ふ》つた。日出雄少年《ひでをせうねん》は暗涙《あんるゐ》を浮《うか》べて
『私《わたくし》は本當《ほんたう》にお前《まへ》と別《わか》れるのが、悲《かな》しいよ、けれど運命《うんめい》だから仕方《しかた》が無《な》いのだよ、それでねえ、お前《まへ》が幸《さひはひ》に、大佐《たいさ》の叔父《おぢ》さんの家《いへ》に安着《あんちやく》して、萬一《まんいち》にも私共《わたくしども》の生命《いのち》が助《たす》かつた事《こと》なら、再《ふたゝ》び、あの景色《けしき》のよい海岸《かいがん》の砂《すな》の上《うへ》で、面白《おもしろ》く遊《あそ》ぶ事《こと》が出來《でき》ませう。若《も》し運惡《うんわる》く、お前《まへ》が途中《とちう》で死《し》んでしまつたなら、私《わたくし》も追付《おつゝ》け彼世《あのよ》で、お前《まへ》の顏《かほ》を見《み》るやうになりませうよ。』と、云《い》ふのは、既《すで》にそれと覺悟《かくご》を定《さだ》めて居《を》るのであらう、流石《さすが》に猛《たけ》き武村兵曹《たけむらへいそう》も聲《こゑ》を曇《くも》らせ
『あゝ、皆《みな》私《わたくし》が惡《わる》いのだ、私《わたくし》の失策《しくじ》つたばかりに、一同《みんな》に此樣《こん》な憂目《うきめ》を見《み》せる事《こと》か。』と深《ふか》く嘆息《たんそく》したが、忽《たちま》ち心《こゝろ》を取直《とりなほ》した樣子《やうす》で
『いや/\、女《をんな》見《み》たやうな事《こと》は言《い》ふまい。』と態《わざ》と元氣《げんき》よく、犬《いぬ》の首輪《くびわ》をポンと叩《たゝ》いて
『これ、稻妻《いなづま》、しつかりやれよ。』と屹《きつ》と其《その》面《おもて》を見詰《みつ》めた。
此時《このとき》、二名《にめい》の水兵《すいへい》は、私《わたくし》の命《めい》に從《したが》つて、犬《いぬ》を抱《いだ》いて、鐵階《てつかい》を登《のぼ》つた、鐵檻《てつおり》の車《くるま》の上《うへ》からは前《まへ》にもいふ樣《やう》に、砂《すな》すべりの谷《たに》の外《そと》へ飛出《とびで》る事《こと》の出來《でき》るのである。車外《しやぐわい》の猛獸《まうじう》は、見《み》る/\内《うち》に氣色《けしき》が變《かわ》つて來《き》た。隙《すき》を覗《うかゞ》つたる水兵《すいへい》は、サツと出口《でぐち》の扉《と
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