》を冐《おか》すが如《ごと》きは、吾等《われら》の深《ふか》く憂《うれ》ふる處《ところ》なり。盖《けだ》し、日本《につぽん》の臣民《しんみん》は如何《いか》なる塲合《ばあひ》に於《おい》ても、其《その》身《み》を思《おも》ふよりも、國《くに》を思《おも》ふ事《こと》大《だい》なれば、若《も》し救《すく》ふに良策《りようさく》なくば、乞《こ》ふ、大義《たいぎ》の爲《ため》に吾等《われら》を見捨《みす》て玉《たま》へ、吾等《われら》も亦《ま》た運命《うんめい》に安《やす》んじて、骨《ほね》を此《この》山中《さんちう》に埋《うづ》めん。
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と、猶《な》ほ數行《すうぎやう》を書《か》き加《くわ》へて
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若《も》し、吾等《われら》が不幸《ふかう》にして、此《この》深山《しんざん》の露《つゆ》と消《き》えもせば、他日《たじつ》貴下《きか》が、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の壯麗《さうれい》なる甲板《かんぱん》より、仰《あほ》[#ルビの「あほ」は底本では「おほ」]いで芙蓉《ふえう》の峯《みね》を望《のぞ》み見《み》ん時《とき》、乞《こ》ふ吾等《われら》五名《ごめい》の者《もの》に代《かわ》りて、只《たゞ》一聲《いつせい》、大日本帝國《だいにつぽんていこく》の萬歳《ばんざい》を唱《とな》へよ、吾等《われら》も亦《ま》た幽冥《いうめい》より其《その》聲《こゑ》に和《わ》せん。
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斯《か》く認《したゝ》め終《をは》りし書面《しよめん》をば幾重《いくえ》にも疊《たゝ》み込《こ》み、稻妻《いなづま》の首輪《くびわ》に堅《かた》く結《むす》び着《つ》けた。犬《いぬ》は仰《あほ》いで私《わたくし》の顏《かほ》を眺《なが》めたので、私《わたくし》は其《その》眞黒《まつくろ》なる毛《け》をば撫《な》でながら、人間《にんげん》に物語《ものがた》るが如《ごと》く
『これ、稻妻《いなづま》、汝《おまへ》は世《よ》に勝《すぐ》れたる犬《いぬ》だから、總《すべ》ての事情《じじやう》がよく分《わか》つて居《を》るだらう、よく忍耐《しんぼう》して、大佐《たいさ》の家《いへ》に達《たつ》して呉《く》れ。』と、いふと、稻妻《いなづま》は恰《あだか》も私《わたくし》の言《げん》を解《げ》し得《え》た如《ごと》く、凛然《りんぜん》として尾《を》を
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