びら》を排《ひら》くと、途端《とたん》、稻妻《いなづま》は、猛然《まうぜん》身《み》を跳《をど》らして、彼方《かなた》の岸《きし》へ跳上《をどりあが》る。待設《まちまう》けたる獅子《しゝ》數頭《すうとう》は、電光石火《でんくわうせきくわ》の如《ごと》く其《その》上《うへ》へ飛掛《とびかゝ》つた。五|秒《べう》、十|秒《べう》は大叫喚《だいけうくわん》、あはや、稻妻《いなづま》は喰伏《くひふ》せられたと思《おも》つたが、此《この》犬《いぬ》尋常《じんじやう》でない、忽《たちま》ちむつくと跳《は》ね起《お》きて、折《をり》[#ルビの「をり」は底本では「ぞり」]から跳《をど》り掛《かゝ》る一頭《いつとう》の雄獅《をじゝ》の咽元《のどもと》に噛付《くひつ》いて、一振《ひとふ》り振《ふ》るよと見《み》へたが、如何《いか》なる隙《すき》をや見出《みいだ》しけん、彼方《かなた》に向《むか》つて韋駄天走《ゐだてんばし》り、獅子《しゝ》の一群《いちぐん》も眞黒《まつくろ》になつて其《その》後《あと》を追掛《おひか》けた。見《み》る/\内《うち》に其《その》形《かたち》は一團《いちだん》となつて、深林《しんりん》の中《なか》に見《み》えずなつた。稻妻《いなづま》は果《はた》してよく此《この》大使命《だいしめい》を果《はた》す事《こと》が出來《でき》るであらうか。考《かんが》へて見《み》ると隨分《ずゐぶん》覺束《おぼつか》ない事《こと》だが、夫《それ》でも一縷《いちる》の望《のぞみ》の繋《つなが》る樣《やう》にも感《かん》じて、吾等《われら》は如何《いか》にもして生命《いのち》のあらん限《かぎ》り、櫻木大佐《さくらぎたいさ》の援助《たすけ》を待《ま》つ積《つも》りだ。
非常《ひじやう》な困難《こんなん》の間《あひだ》に、三日《みつか》は※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、262−9]去《すぎさ》つたが、大佐《たいさ》からは何《なん》の音沙汰《おとさた》も無《な》かつた、また、左樣《さう》容易《たやす》くあるべき筈《はづ》もなく、四日《よつか》と※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、262−10]《す》ぎ、五日《いつか》と※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、262−10]《す》ぎ、六日《むいか》と※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、262−11]《す》
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