で》に此時《このとき》數十《すうじふ》の獅子《しゝ》、猛狒《ゴリラ》の類《るい》は此《この》穴《あな》の周圍《しうゐ》に牙《きば》を鳴《なら》し、爪《つめ》を磨《みが》いて居《を》るのだから、一寸《ちよつと》でも鐵檻車《てつおりくるま》の外《そと》へ出《で》たら最後《さいご》、直《たゞ》ちに無殘《むざん》の死《し》を遂《と》げてしまうのだ。イヤ出《で》なくても、人《ひと》の弱點《じやくてん》に乘《じやう》ずる事《こと》の早《はや》い猛狒《ゴリラ》は、忽《たちま》ち彼方《かなた》の崖《がけ》から此方《こなた》の鐵車《てつしや》の屋根《やね》に飛移《とびうつ》つて、鐵檻《てつおり》の間《あひだ》から猿臂《えんび》を延《のば》して、吾等《われら》を握《つか》み出《だ》さんず氣色《けしき》、吾等《われら》は一生懸命《いつせうけんめい》に小銃《せうじう》を發射《はつしや》したり、手鎗《てやり》を廻《まわ》したりして、辛《からう》じて其《その》危害《きがい》を防《ふせ》いで居《を》るが、それも何時《いつ》まで續《つゞ》く事《こと》か、夜《よ》が更《ふ》けるに從《したが》つて、猛獸《まうじう》の勢《いきほひ》は益々《ます/\》激烈《げきれつ》になつて來《き》た、かゝる時《とき》には盛《さか》んに火《ひ》を焚《た》くに限《かぎ》ると、それから用意《ようゐ》の篝火《かゞりび》をどん/″\燃《もや》して、絶《た》えず小銃《せうじう》を發射《はつしや》し、また時々《とき/″\》爆裂彈《ばくれつだん》の殘《のこ》れるを投飛《なげとば》しなどして、漸《やうや》く一夜《いちや》を明《あか》したが、夜《よ》が明《あ》けたとて仕方《しかた》がない、朝日《あさひ》はうら/\と昇《のぼ》つて、東《ひがし》の方《ほう》の赤裸《あかはだか》の山《やま》の頂《いたゞき》から吾等《われら》の顏《かほ》を照《てら》したが、一同《いちどう》生《い》きた顏色《がんしよく》は無《な》かつた。日出雄少年《ひでをせうねん》も二名《にめい》の水兵《すいへい》も默《もく》して一言《いちげん》なく、稻妻《いなづま》は終夜《よもすがら》吠《ほ》え通《とう》しに吠《ほ》えたので餘程《よほど》疲《つか》れたと見《み》え、私《わたくし》の傍《かたわら》に横《よこたは》つて居《を》る。ひとり默《だま》つて居《を》られぬのは武村兵曹《たけ
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