べ》となる程《ほど》明《あか》るくはない、加《くわ》ふるに此邊《このへん》は道《みち》いよ/\險《けわ》しく、尖《とが》つた岩角《いはかど》、蟠《わだかま》る樹《き》の根《ね》は無限《むげん》に行方《ゆくて》に横《よこたは》つて居《を》るので、鐵車《てつしや》の進歩《すゝみ》も兎角《とかく》思《おも》はしくない、運轉係《うんてんがゝり》の水兵《すいへい》も、此時《このとき》餘程《よほど》疲勞《つか》れて見《み》えたので、私《わたくし》は考《かんが》へた、人間《にんげん》の精力《ちから》には限《かぎり》がある、今《いま》からかゝる深林《しんりん》に突進《とつしん》するのは、少《すこ》し無謀《むぼう》には※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、249−2]《す》ぎはせぬかと氣付《きづ》いたので、寧《むし》ろ此邊《このへん》に一泊《いつぱく》せんと、此事《このこと》を武村兵曹《たけむらへいそう》に語《かた》ると、武村兵曹《たけむらへいそう》は仲々《なか/\》聽《き》かない
『今《いま》から其樣《そんな》に弱《よわ》つては駄目《だめ》だ、何《な》んでも今夜《こんや》はあの深林《しんりん》の眞中《まんなか》で夜《よ》を明《あか》す覺悟《かくご》だ。』と元氣《げんき》よく言放《いひはな》つて立上《たちあが》り、疲《つか》れたる水兵《すいへい》に代《かわ》つて鐵車《てつしや》の運轉《うんてん》を始《はじ》めた。鐵車《てつしや》は再《ふたゝ》び猛烈《まうれつ》なる勢《いきほひ》をもつて木《き》の根《ね》を噛《か》み、岩石《がんせき》を碎《くだ》いて突進《とつしん》する。あゝ好漢《かうかん》、此《この》男《をとこ》は實《じつ》に壯快《さうくわい》な男兒《だんじ》だが、惜《をし》むらくば少《すこ》しく無鐵砲《むてつぽう》に※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、249−8]《す》ぎるので、萬一《まんいち》の※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、249−8]失《あやまち》が無《な》ければよいがと思《おも》ふ途端《とたん》、忽《たちま》ち
『しまつたツ。』と一聲《いつせい》、私《わたくし》も、日出雄少年《ひでをせうねん》も、水兵《すいへい》も稻妻《いなづま》も、一度《いちど》にドツと前《まへ》の方《ほう》へ打倒《うちたを》れて、運轉臺《うんてんだい》から眞逆《まつさかさ
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