には、海岸《かいがん》の家《いへ》では、水兵《すいへい》共《ども》が澤山《たくさん》の御馳走《ごちさう》を作《こしら》へて待《ま》つて居《ゐ》る筈《はづ》だから、其《その》以前《いぜん》にヒヨツコリと皈《かへ》つては興《けう》が無《な》い、行《ゆ》く可《べ》し/\。』と勇《いさ》み立《た》つ。二名《にめい》の水兵《すいへい》も日出雄少年《ひでをせうねん》も大賛成《だいさんせい》なので、直《たゞ》ちに相談《さうだん》は纏《まとま》つたが、さて何處《いづれ》の方面《ほうめん》へと見渡《みわた》すと、此處《こゝ》を去《さ》る事《こと》數里《すうり》の西方《せいほう》に一個《いつこ》の高山《かうざん》がある、火山脉《くわざんみやく》の一《ひと》つと見《み》え、山《やま》の半腹《はんぷく》以上《いじやう》は赤色《せきしよく》の燒石《やけいし》の物凄《ものすご》い樣《やう》に削立《せうりつ》して居《を》るが、麓《ふもと》は限《かぎ》りもなき大深林《だいしんりん》で、深林《しんりん》の中央《ちうわう》を横斷《わうだん》して、大河《たいか》滔々《とう/\》と流《なが》れて居《を》る樣子《やうす》、其邊《そのへん》を進行《しんかう》したら隨分《ずいぶん》奇《く》しき出來事《できごと》もあらうと思《おも》つたので、直《たゞ》ちに水兵《すいへい》に命《めい》じて、鐵車《てつしや》を其《その》方向《ほうかう》に進《すゝ》めた、猛獸《まうじう》は矢張《やはり》其處此處《そここゝ》に隱見《いんけん》して居《を》るのである。
時《とき》は午後《ごゞ》の六時《ろくじ》間近《まぢか》で、夕陽《ゆふひ》は西山《せいざん》に臼《うすつ》いて居《を》る。隨分《ずいぶん》無謀《むぼう》な事《こと》だ、今頃《いまごろ》から斯《かゝ》る深林《しんりん》に向《むか》つて探險《たんけん》するのは、けれど興《けう》に乘《じやう》じたる吾等《われら》の眼中《がんちう》には、向《むか》ふ處《ところ》敵《てき》なしといふ勢《いきほひ》で、二三|里《り》進《すゝ》んで、其《その》深林《しんりん》の漸《やうや》く間近《まぢか》になつた時分《じぶん》日《ひ》は全《まつた》く暮《く》れた。すると、鎌《かま》のやうな新月《しんげつ》が物凄《ものすご》く下界《げかい》を照《てら》して來《き》たが、勿論《もちろん》道《みち》の案内《しる
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