念塔《きねんたふ》の建立《けんりつ》は終《をは》つて、吾等《われら》は五六|歩《ぽ》退《しりぞ》いて眺《なが》めると、麗《うる》はしき大理石《だいりせき》の塔《たふ》の表面《ひやうめん》には、鮮明《あざやか》に『大日本帝國新領地朝日島《だいにつぽんていこくしんりようちあさひたう》』。あゝ之《こ》れで安心《あんしん》々々、一同《いちどう》は帽《ぼう》を脱《だつ》して大日本帝國《だいにつぽんていこく》の萬歳《ばんざい》を三呼《さんこ》した。
此時《このとき》、車中《しやちう》に殘《のこ》して置《お》いた猛犬稻妻《まうけんいなづま》が急《きふ》に吼立《ほえた》てるので、頭《かしら》を廻《めぐ》らすと、今《いま》しも爐裂彈《ばくれつだん》で逃出《にげだ》したる獅子《しゝ》の一群《いちぐん》が、今度《こんど》は非常《ひじやう》な勢《いきほひ》で、彼方《かなた》の森《もり》から驀直《まつしぐら》に襲撃《しふげき》して來《き》たのである。『それツ。』と一聲《いつせい》吾等《われら》は周章狼狽《あわてふためい》て鐵檻《てつおり》の車《くるま》の中《なか》へ逃込《にげこ》んだが、危機一髮《きゝいつぱつ》、最後《さいご》に逃込《にげこ》んだ武村兵曹《たけむらへいそう》はまだ其《その》半身《はんしん》が車外《しやぐわい》にあるのに、殆《ほと》んど同時《どうじ》に飛付《とびつ》いて來《き》た雄獅子《をじゝ》のために、ズボンは滅茶苦茶《めちやくちや》に引裂《ひきさ》かれ、片足《かたあし》の靴《くつ》は無殘《むざん》に噛取《かみと》られて、命《いのち》から/″\車中《しやちう》に轉《まろ》び込《こ》んだ。つゞいて飛込《とびこ》まんとする獅子《しゝ》を目掛《めが》けて、私《わたくし》は一發《いつぱつ》ドガン、水兵《すいへい》は手鎗《てやり》て突飛《つきと》ばす、日出雄少年《ひでをせうねん》は素早《すばや》く身《み》を跳《をど》らして、入口《いりくち》の扉《とびら》をピシヤン。
『おつ魂消《たまぎ》えた/\、危《あぶ》なく生命《いのち》を棒《ぼう》に振《ふ》る處《ところ》だつた。』と流石《さすが》の武村兵曹《たけむらへいそう》も膽《きも》をつぶして、靴《くつ》無《な》き片足《かたあし》を撫《な》でゝ見《み》たが、足《あし》は幸福《さひはひ》にも御無事《ごぶじ》であつた。
既《すで》に塔《たふ》の建
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