ら》ひ、其間《そのあひだ》に首尾《しゆび》よくやつて退《の》けやうといふ企《くわだて》だ。そこで用意《ようゐ》が整《とゝな》ふと、吾等《われら》は手《て》に/\一個《いつこ》宛《づゝ》の爆裂彈《ばくれつだん》を携《たづさ》へて立上《たちあが》つた。兼《かね》て用意《ようゐ》の鳥《とり》の肉《にく》を、十|斤《きん》ばかり鐵檻《てつおり》の間《あひだ》から投出《なげだ》すと、食《しよく》に飢《う》ゑたる猛獸《まうじう》は、眞黒《まつくろ》になつて其《その》上《うへ》に集《あつま》る。
それといふ合圖《あひづ》の下《した》に、一、二、三、同時《どうじ》に五個《ごゝ》の爆裂彈《ばくれつだん》は風《かぜ》を切《き》つて落下《らつか》した。忽《たちま》ち山岳《さんがく》[#ルビの「さんがく」は底本では「さくがく」]鳴動《めいどう》し、黒烟《こくゑん》朦朧《もうろう》と立昇《たちのぼ》る、其《その》黒烟《こくゑん》の絶間《たえま》に眺《なが》めると、猛狒《ゴリラ》は三頭《さんとう》共《とも》微塵《みじん》になつて碎《くだ》け死《し》んだ、獅子《しゝ》も大半《たいはん》は打斃《うちたを》れた、途端《とたん》に水兵《すいへい》が
『あれ/\、あの醜態《ざま》よう。』と指《ゆびざ》す彼方《かなた》を見渡《みわた》すと、生殘《いきのこ》つたる獅子《しゝ》の一團《いちだん》は、雲《くも》を霞《かすみ》と深林《しんりん》の中《なか》へ逃失《にげう》せた。
『それ、此《この》間《ま》に。』と武村兵曹《たけむらへいそう》は紀念塔《きねんたふ》を擔《かつ》いで走《はし》り出《で》たので、一同《いちどう》も續《つゞ》いて車外《しやぐわい》に跳《をど》り出《い》で、日出雄少年《ひでをせうねん》は見張《みはり》の役《やく》、私《わたくし》は地《つち》を掘《ほ》る、水兵《すいへい》は石《いし》を轉《まろ》ばす、武村兵曹《たけむらへいそう》は無暗《むやみ》に叫《さけ》ぶ、エンヤ/\の懸聲《かけごゑ》と共《とも》に、束《つか》の間《ま》に塔《たふ》の建立《けんりつ》は成就《じようじゆ》した。實《じつ》に此《この》間《あひだ》、時《とき》を費《つひや》す事《こと》十|分《ぷん》か、十五|分《ふん》、人間《にんげん》も一生懸命《いつせうけんめい》になると、隨分《ずいぶん》力量《ちから》の出《で》るものだよ。
紀
前へ
次へ
全302ページ中196ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング