がん》なる櫻木大佐《さくらぎたいさ》の住家《すみか》からは、確《たし》かに三十|里《り》以上《いじやう》距《へだゝ》つたと思《おも》はるゝ一《ある》高山《かうざん》の絶頂《ぜつてう》に達《たつ》した時《とき》には、其《その》數《かず》も餘程《よほど》減《げん》じて、まだ執念深《しゆうねんぶか》く鐵車《てつしや》の四邊《あたり》を徘徊《はいくわい》して居《を》るのは、二十|頭《とう》許《ばかり》の雄獅子《をじゝ》と、三頭《さんとう》の巨大《きよだい》なる猛狒《ゴリラ》とのみであつた。
此《この》高山《かうざん》は、風景《ふうけい》極《きわ》めて美《うる》はしく、吾等《われら》の達《たつ》したる頂《いたゞき》は、三方《さんぽう》巖石《がんせき》が削立《せうりつ》して、自然《しぜん》に殿堂《でんどう》の形《かたち》をなし、かゝる紀念塔《きねんたふ》を建《た》つるには恰好《かつこう》の地形《ちけい》だから、遂《つひ》に此處《こゝ》に鐵車《てつしや》を停《とゞ》めた。時《とき》は午後《ごゞ》二|時《じ》四十五|分《ふん》、今《いま》から紀念塔《きねんたふ》を建立《けんりつ》するのである。
『用意《ようゐ》!。』と武村兵曹《たけむらへいそう》が叫《さけ》ぶと、二名《にめい》の水兵《すいへい》は車中《しやちう》の大旅櫃《だいトランク》の中《なか》から、一個《いつこ》の黒色《こくしよく》の函《はこ》を引出《ひきだ》して來《き》た。此《この》函《はこ》の中《なか》には、數《すう》十|個《こ》の爆裂彈《ばくれつだん》が入《はい》つて居《を》るのである。
爆裂彈《ばくれつだん》! 何《なん》の爲《ため》に? と讀者《どくしや》諸君《しよくん》は審《いぶか》るであらうが、之《これ》には大《おほい》に考慮《かんがへ》のある事《こと》である、今《いま》、其《その》目的地《もくてきち》に達《たつ》し、いざ建塔《けんたふ》といふ塲合《ばあひ》に、斯《か》く獅子《しゝ》や猛狒《ゴリラ》が、一頭《いつとう》でも、二頭《にとう》でも、其邊《そのへん》に徘徊《はいくわい》して居《を》つては、到底《とても》車外《しやぐわい》に出《い》でゝ其《その》仕事《しごと》にかゝる事《こと》が出來《でき》ない、そこで、此《この》爆裂彈《ばくれつだん》を飛《と》ばして、該獸等《かれら》を斃《たを》し且《か》つ追拂《おひは
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